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2017年03月16日

リーマンショックを引き起こした!? 格付け機関とは

 

サマリー

  • ・債券の信用リスクを調査しランク付けすることを格付けという
  • ・代表的な格付け機関は数社しかなく寡占状態となっている
  • ・格付け機関の評価は100%正しいとは限らない

 

 

格付け機関とは

格付けとは企業が発行する債券が将来、元本償還・利払いされる確実性の程度を判断し、ランク付けすることです。企業そのものではなく企業が発行する債券に対して行います。基本的には企業からの依頼を受けて格付けを行いますが、依頼がなく格付けを行う「勝手格付け」もあります。

格付けは、信用リスクの判断材料として用いることができます。格付け機関は、文字通り格付けを行う機関ですが、すべて民間企業となっており、以下のような企業で寡占状態となっています。

  • アメリカ
  • ・ムーディーズ
  • ・S&P(スタンダード&プアーズ)
  • アメリカ、イギリス合併
  • ・フィッチ
  • 日本
  • ・格付投資情報センター
  • ・日本格付研究所

 

格付けの種類には、1年以上の長期債などを対象とした長期格付けと、CP(コマーシャルペーパー)などを対象とした1年未満の短期格付けとがあります。

格付けの表記は機関によって異なりますが、長期の場合、主に次の順になります。

  • [格が高い] AAA → AA → BBB → BB [格が低い]
  • (ムーディーズではAaaといった表記をします)

 

BBBまでが投資適格となり、BB以下は投機的とみなされ、ジャンク・ボンドと呼ばれることもあります。ジャンク・ボンドは信用リスクが高いため、利回り(リスクプレミアム)も高くなるのが普通です。また、短期では、例えばムーディーズがP-1、P-2、P-3までを投資適格、NPを投機的とし、日本格付研究所ではJ-1+、J-1、J-2、J-3までを投資適格、NJを投機的としています。

このような格付け機関による評価を確認することで、リスクをある程度、事前に把握することができます。

 

 

リーマンショックを引き起こした?格付け機関の責任

格付け機関のビジネスモデルは、発行体から格付けの手数料を取るものとなっています。元々は投資家に情報を提供し、そこから情報販売収入を得ていましたが、それだけでは事業を営むことが困難になり1970年代には発行体からも手数料を取るようになりました。

そのため格付け機関は、格付けを行う相手から収入を得ており、利益相反が起こるビジネスモデルとなっています。ここが格付け機関の最大の問題点となっており、公正な格付けがなされていないのではないかと指摘されています。

 

あのリーマンショックが生じた一因に格付け機関の存在もあると言われています。リーマンショックはサブプライムローン問題に端を発していますが、これは低所得者層に対する住宅ローンを証券化したものが、住宅価格の上昇が止まったことで不良債権化したことが原因です。

低所得者層に対する住宅ローンをもとに組成した証券と聞くと、焦げ付くことも容易に想像できリスクが高そうに感じますが、世界経済に影響を及ぼすほど流通してしまっていました。それは格付け機関の評価が高く、リスクが低いものとされていたからです。

これを格付け機関が意図的に、即ちリスクが高い商品と認識しておきながら格付けを高くしていたのかは定かではありません。元々サブプライムローンに関しては、デリバティブを駆使して組成された複雑な商品が出回っており、そのリスクを正確に評価するというのは難しいものでした。

 

また、格付け機関には優秀なアナリストが少ないという人的資源の問題も指摘されています。いずれにせよ金融危機を引き起こすほどリスクの高い商品の流通を食い止められなかったことは事実です。

格付けというのはある程度の信用リスクの判断材料になることは間違いありません。実際に日本の機関投資家は当たり前のように格付けに依存した資産運用を行っています。しかし、格付けを過剰に信頼することは危険をはらんでいる行為と言えるでしょう。

 

 

まとめ

格付けは確かに判断材料の一つになるものですが、依存しすぎるのは危険だと言えるでしょう。あくまで参考程度とし、投資の際は格付け以外にも確かな根拠(バリュー投資で言えば企業価値と株価など)を持つことが重要です。

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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