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2016年06月20日

実はよく知らない「ベンチャーキャピタル」の基礎知識

 

サマリー

・ベンチャーキャピタル(VC)とは、主に新興企業に対する出資・支援を行う投資会社をいう

・VCの実例として、Twitter、Facebookなどへの投資実績を持つ米大手「アンドリーセン・ホロウィッツ」などが挙げられる

・日本のVC投資金額は米国のVC投資金額の50分の1程度に過ぎず、国内VC市場は未だ発展途上の段階にある

 

 

ベンチャーキャピタルとは何か?

ベンチャーキャピタル(VC: Venture Capital)とは、主に新興企業に対する出資・支援を行う投資会社のことをいいます。高い成長率を見込める未上場企業などに投資すると同時に経営コンサルティングを行い、投資した企業の株式上場を目指すなどして高いリターン(利益)を狙います。

 

ベンチャーキャピタルは、主に以下のような段階を通じてベンチャー投資を行います。

 

  •  1. ファンド組成

ベンチャー企業に対する投資を行うための資金を募ります。主に、金融機関や機関投資家などから資金調達を行い、ベンチャー投資の原資を確保します。

  •  2. ベンチャー企業の選定

多数のベンチャー企業にアプローチし、有望な投資先を選定します。

  •  3. 投資・育成

将来性があると見込まれるベンチャー企業に対して出資を行い、投資先の株式を取得します。同時に、投資先に対して必要なコンサルティングを行い、ベンチャー企業を育成します。

  •  4. イグジット(資金回収)

投資先のベンチャー企業を株式上場させるなどして、ベンチャーキャピタルの保有する株式を売却し、投資資金を回収します。この段階を「イグジット(EXIT)」といいます。成功した場合、大きな利益を上げられる可能性があります。

  •  5. 利益分配

投資によって得られた利益は出資者などに分配されたり、次のベンチャー投資の原資に回されたりします。

 

こうして新興企業によるイノベーションなどを促進し、経済成長や価値創造に貢献するのがベンチャーキャピタルの役割です。

 

 

米大手アンドリーセン・ホロウィッツに見るVC実例

ベンチャーキャピタルの具体例として、米国ベンチャーキャピタル大手の「アンドリーセン・ホロウィッツ」について見てみましょう。

 

アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)は、Skype、Twitter、Facebookなどへの投資実績のある米国有数のベンチャーキャピタルです。このベンチャーキャピタルは、世界で最初のウェブブラウザを開発したマーク・アンドリーセンと、2015年に日本でも出版された『HARD THINGS』の著者としても有名なベン・ホロウィッツの2人によって2009年に創業されました。両者ともベンチャー企業のCEO(最高経営責任者)を務めた経験があり、その経験を基にベンチャー企業に対する支援や助言を行っています。

 

最近では、アンドリーセン・ホロウィッツは「民泊」サービスの提供で知られるAirbnb(エアビーアンドビー)にいち早く投資していたことでも有名です。Airbnbとは、自宅や空き家などを貸したい人と旅行者など宿泊先を借りたい人をマッチングするサービスを行うベンチャー企業です。2015年12月時点で、Airbnbに登録されている部屋数は約200万室、累計利用者数6,000万人以上に達し、試算された企業価値は250億ドル、日本円にして3兆円(2015年12月末時点の為替1ドル120円換算)にも上ると言われています。

 

Airbnbの他にも、アンドリーセン・ホロウィッツはビットコイン(過去記事「2016年の今こそ知るべきビットコイン」参照)やFinTech(過去記事「FinTech(フィンテック)が金融業界を革新する!?」参照)など、これから社会を変える可能性を持つ産業に次々と目を向けています。

 

以上のように、アンドリーセン・ホロウィッツのようなベンチャーキャピタルは、かつて市場に存在しなかった新興産業を育成し、投資先の企業価値を高めることによって高い投資利益を得ることを目的としています。ベンチャーキャピタルは、社会のイノベーションを後押しすることで、経済成長の原動力となり得る重要な存在だと考えられます。

 

 

日本のベンチャーキャピタルの現状

日本国内にも、ベンチャーキャピタルは多数存在しています。例えば、産業革新機構などの政府系ファンドや、ニッセイ、伊藤忠、電通、NTTドコモなど大手企業傘下のVC、さらに独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズや日本テクノロジーベンチャーパートナーズなどが挙げられます。

 

また、かつてベンチャーキャピタルから出資を受けたベンチャー企業の中には、楽天, DeNA, グリーといった今や誰もが知っている有名企業が登場しています。国内でのベンチャー企業の成功事例は、着実に積み上がってきている状況といえます。

 

しかし、日本におけるベンチャーキャピタルには多くの課題もあります。主な課題の一つは、今後の国内ベンチャー投資規模の更なる拡充が求められることです。

 

ベンチャーエンタープライズセンターの発表するベンチャー白書2015によれば、2014年の米国VC投資金額は493.1億ドル(投資件数4,361件)、日本円にして約6兆円弱(2014年末為替の1ドル120円換算)にも上るのに対し、日本国内2014年度のVC投資金額はたったの1,171億円(投資件数969件)にしか過ぎません。このデータに基づいて日米を比較すると、日本のVC投資金額は米国のVC投資金額の50分の1程度にしか過ぎません。こうして見ると、日本のベンチャー市場が依然として発展途上段階にあることが窺えます。今後の国内ベンチャーがより一層の盛り上がりを見せることを期待するばかりです。

 

 

まとめ

「ベンチャーキャピタル」という言葉を時々ニュースなどで見かけますが、実際、ベンチャーキャピタルがどのような事業を行っているかを知る方は未だに少ないかと考えられます。当記事がベンチャーキャピタルの初歩的な理解の一助となれば幸いです。

 

 

 

片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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