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2016年12月11日

投資信託とヘッジファンドはどこが違うのか

 

サマリー

・投資信託とヘッジファンドは、投資手法、運用に対する規制、収益目標やコストなどの面で大きな違いがある

・投資信託は「公募」のため厳格に規制されており、基本的にベンチマークとの比較により収益目標を設定している

・「私募」であるヘッジファンドは自由度の高い運用ができ、どんな相場でも収益を狙う「絶対収益」の追求を目標とする

 

 

投資信託とヘッジファンドの違い

投資信託とヘッジファンドは、どちらも運用の専門家であるファンドマネージャーに資金を預けて運用を任せる点で共通しています。しかし、実はこれらの商品性には非常に大きな違いがあります。

 

一般的に、投信信託とヘッジファンドの違いは下表のように考えられています。投信ファンド比較

ここでは、この表に基づいてそれぞれの違いを見てみましょう。

 

 

投資手法

一般的に、投資信託は「アクティブ運用」や「パッシブ運用」などの投資手法を取っています。「アクティブ運用」とは日経平均株価やTOPIXなどのベンチマーク(比較に用いる指標)を上回る運用成績を目標とする手法であり、「パッシブ運用」とはベンチマークに連動する運用成績を目標とする手法です。どちらも市場平均の変動を基準に投資を行う手法といえます。

 

一方、ヘッジファンドは「ロング・ショート戦略」「イベント・ドリブン戦略」「アクティビスト戦略」など様々な投資手法を用いています。「ロング・ショート戦略」とは、割安な株を買うと共に割高な株を空売りすることにより、市場変動による影響を軽減しつつ収益を目指す手法です。また、「イベント・ドリブン戦略」とは合併・買収(M&A)などの個別企業の重要な企業活動(イベント)を投資機会と捉える手法を指し、「アクティビスト戦略」とは経営参加権の行使により収益を最大化させようと試みる手法を指します。

どの投資戦略も、ヘッジファンドの高度な専門性や資金力を駆使して高い投資利益を狙うものと考えられます。

 

 

出資者と運用規制

投資信託は、個人を中心に広く一般投資家から資金を募集しています。このような募集方法を「公募」といいます。銀行や証券会社を通して買付する一般的な商品から運用会社と直接契約する独立系の商品まで多数の投資信託がありますが、ほとんどのものが「公募」になります。そのため、特に金融や投資にそれほど精通しない個人投資家などを保護する必要から、投資信託運用会社等は行政の監督下に置かれ、厳格な販売規制や運用制限が課されています

 

それに対して、通常、ヘッジファンドは50名未満の少数の投資家や投資に精通したプロのみが出資する「私募」という募集方法を取っています。よって、投資信託ほど厳格な規制の必要がなく、空売りやレバレッジ(自己資本を上回る金額の投資を行うこと)をかけるなど自由度の高い運用が可能です。

 

 

収益目標の違い

ほとんどの投資信託は金融市場の動向に沿って運用を行うため、常に大半の資金を株式や債券などに換えており、余剰資金が生じないように運用されています。そのため、金融市場の変動に常に大きく影響され、相場の状況にある程度従った運用になります。よって、収益目標は基準となるベンチマークに基づいて設定せざるを得ず、ベンチマークと比較してどの程度の収益を狙うかという「相対収益」を追求することが目標となります。

 

一方、ヘッジファンドは運用の自由度が高く、市場環境に依存しない投資戦略を取ることができるため、ベンチマークとは無関係に「絶対収益」を追求することが収益目標となります。どんな相場の状況であっても確実に収益を上げる「絶対収益」を目標とする点は、ヘッジファンドの大きな特徴と考えられます。

 

 

投資にかかるコスト

投資信託の場合、証券会社など販売会社に支払う「購入時手数料」、運用期間中に投資した資金から引かれる「信託報酬」、投資信託の解約時などに支払う「信託財産留保額」などのコストがかかります。場合によっては、投資信託購入後の最初の年間コストが5%前後、その後の年間コストが2%前後かかるケースもあります。金融機関などによる仲介が行われている投資信託ほどコストが高額になる傾向があります。

 

一方、ヘッジファンドは直接契約を結ぶことが多く、中間コストはかからないのが一般的です。資産管理業務などのコストとして支払う「管理報酬」、一定水準以上の運用成果が出た場合に発生する「成功報酬」などがあります。収益が出た場合に「成功報酬」を支払うことになりますが、反対に収益が出なかった場合には「成功報酬」は発生しません。このような報酬体系を取っているため、ヘッジファンドが運用成果を追求する意欲は大変高く、この点も投資家が高い収益を期待できる要因の一つだといえます。

 

 

まとめ

投資信託は一般投資家にも広く知られている一方、ヘッジファンドの存在は依然として十分浸透しているとはいえません。しかし、今回ご紹介したように、投資信託ヘッジファンドにはそれぞれ際立った特徴があります。投資信託と同様、ヘッジファンドについても情報収集や検討を行い、ご自身のニーズに合致する投資先を是非見つけて頂きたいところです。

 

ヘッジファンドでの運用が向いているのは、1,000万円を超えるようなまとまった資金があり、そして自分自身での投資判断を行いたくないという意向を持つ人になるかと思います。

投資信託では、銘柄の選択や、解約のタイミングを検討する際に、結局ある程度の能力(知識や経験)がが問われる一方、ヘッジファンドは一度預け入れればあとはファンドマネージャーの能力に従い、長期間放置しておくだけになります。自分では時間が取れない、自分では投資判断する自信がないという方には向いているでしょう。

ただし、「実際にヘッジファンドで運用してみたい」と思ったところで、投資信託のように営業マンが売ってくるということはありません。自ら調べ、問い合わせをする必要があります。

当サイトでは、管理人の主張など、国内の優良なヘッジファンドについての考察記事をいくつか掲載しています。是非ご一読いただき、参考にしていただけますと幸いです。

 

関連ページ

■ ヘッジファンドが企業を変える?「アクティビスト投資」の基礎知識
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参考ページ

ヘッジファンド投資の優位性と日本のおすすめヘッジファンド
ヘッジファンドと投資信託の手数料を比較

 

 

片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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