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2017年02月19日

サブプライムローン崩壊の裏側にあったCDSとは

 

サマリー

・CDSとはプレミアムを支払う代わりに、プロテクションを得るデリバティブ契約のことである

・CDSには“保険”としての側面と、“投機”としての側面の両方がある

・サブプライムローンの背景でAIGを追い込んだのはCDS。ただし、CDSが悪いわけではない

 

 

CDS(Credit Default Swap)とは

CDSとはCredit Default Swap(クレジット・デフォルト・スワップ)の略称で、社債や国債などを対象とした保険契約のことであり、債務不履行といった信用リスクに備えたデリバティブ(金融派生商品)契約のことを指します。

CDSの買い手は、プレミアム(保証料)を支払う代わりに、契約の対象となる債権が契約期間中に債務不履行(デフォルト)になった場合、それによって生じる損失(元本・利息等)を保証してもらうことができます。一方で、売り手はプレミアムを受け取る代わりに、万が一デフォルトになった場合、買い手に対して損失分を支払うという仕組みになっています。尚、本取引によって、デフォルトが起きた場合に買い手が損失相当額を受け取る権利のことを「プロテクション」と言います。

CDSは“スワップ”という名称が付けられていますが、この内容の通り“オプション取引”の一つに分類されます。

 

例えば、ゼネラル・エレクトリック(General Electric Company、略称:GE)の社債10,000万ドル(1億ドル)について、年間20万ドル分のプレミアム(保証料)を支払うことで、この社債の10年もののCDSを購入するとします。この場合、10年間で延べ200万ドルものプレミアムを支払うことになりますが、GEが10年以内に債務不履行に陥ると、CDSの買い手は1億ドルを手にすることができます。

 

つまり、CDSの買い手は「10年以内にGEが債務不履行に“陥るだろう(かもしれない)”」と考えてプレミアムを支払い、売り手は「10年以内にGEが債務不履行に“陥るわけがない”」という考えのもと、プレミアム(保証料)を受け取る代わりに信用リスク引き受ける、つまり債務不履行になった際にプロテクションを支払う責務を負うことになります。

 

ここでの数値は仮の値として設定したものですが、通常そのプレミアム(保証料)は対象となる国や企業の信用度合い(リスク)によって上下します。つまり、信用力の低い国や企業のCDSのプレミアム(保証料)率は高くなり、反対に信用力の高い国や企業のCDSのプレミアム(保証料)率は低くなります。

そのため、CDSのプレミアム(保証料)率は債券の信用格付けと同様に、投資家が国や企業の信用力を判断する指標にもなっています。

 

 

保険としての役割から投機の対象として

通常、CDSの売り手が主にプレミアム(保証料)収入を目的としているのに対し、CDSの買い手は、倒産や破綻などによる債権の信用リスクを抑制(ヘッジ)することを目的としています。

例えば、先述の例を見てみれば、CDSを購入することによって、投資家は1億ドルを失うリスクを回避しています。もちろん、このケースにおいては、デフォルトリスクがそれほど高くなく(プレミアムが0.02%と高くない)、200万ドルを支払う可能性は高いようにも考えられますが、損失の“上限”を200万ドルに止めることができるのが、CDSの保険としての側面です。

 

このようにCDSは債務保証に似た仕組みですが、債権者ではない第三者も買い手になれるといった特徴もあり、それによって投機的な側面も併せ持っています。つまり、そもそもGEが債務不履行に陥ると考えている人にとっては、この「債権者ではない第三者も買い手になれる」という特徴を活用することで、債券を購入することなく、その債券のデフォルトに賭けることができます。

仮に、私がGE破綻に賭けようとした場合、GEの債券を保有せずにCDSのみをどこかの保険会社などから購入します。

この場合、債券も保有していないのにも関わらず、プレミアム(保証料)のみをただただ払い続けなければなりませんが、仮にGEが債務不履行に陥れば、私は債券の額面相当の1億ドルを手にすることができます。

このように、債券の発行元の「債務不履行に賭ける」という投機的な利用方法も、CDSの世界では広く行われています。

 

 

サブプライムローン問題との関係。AIGを追い詰めたCDS

CDSの歴史は浅く、1990年代中頃にロンドン市場で取引が始まったとされています。その後世界中で活発に取引が行われるようになり、ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)が契約書の雛形を作成した2001年以降、爆発的な普及を見せます。ISDAによると、2001年には1兆ドルにも満たなかった市場は、2007年には約62兆ドルにまで発展し、CDSは金融業界において非常に重要な市場の一つと呼べるレベルまで拡大しました。

 

しかし、2007年頃からのサブプライムローンの焦げ付きによって、金融業界全体の様相が急速に悪化します。2008年の9月にはアメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻し、その直後には大手生命保険会社のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の経営危機が明らかになりました。

この背景には、AIGが、リーマン・ブラザーズの保有していた債券についてCDSによる多額の保証を行っていたために、リーマンの破綻によって一気に押し寄せたしわ寄せに対応しきれなくなったことが原因としてあります。

ちなみに、この時AIG(厳密には一部門であるAIG・FP)が負担しなければならなかった元本の総額は4,410億ドル。仮に、この補償額にAIGが押しつぶされてしまった場合、CDSを購入していた投資家たちも多額の負債を負うことになり、連鎖的に破綻を起こす可能性がありました。

 

この、CDS市場全体のみならずアメリカ金融市場、ひいてはアメリカ経済全体への影響を危惧したFRB(連邦準備制度理事会)は、AIGに融資することを決定し、結果としてAIGは政府の管理下で経営再建が行われることとなり、なんとか経営破綻を免れます。

 

しかし、その後金融危機は収まったものの、CDSの市場は減退してしまいました。

 

 

まとめ

サブプライムローン問題・リーマンショックと並んで、AIGの件で認知度の上がったCDSですが、「なんとなく良くないもの」と思ってしまい、その仕組みや本質を理解している人は少ないのではないでしょうか。CDSはリスクの売買を可能にした非常に画期的金融商品の一つで、ポジティブな側面も多分にあります。

客観的な視点できちんと金融の世界についての知識を積みあげていくことは、資産運用を行っていく上で非常に重要なことだと思いますので、是非一つの事例に囚われずに様々な文献を通して知識を深めていっていただければと思います。

 

 

関連ページ

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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