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2017年07月11日

なぜ失敗した?スティール・パートナーズによるブルドックソース買収

サマリー

・スティール・パートナーズとはアメリカのアクティビスト・ファンドである

・ブルドックソース買収では全株取得を目指すも阻止された

・株式市場では買収等のイベントが与える影響を正確に理解することが重要である

 

 

スティール・パートナーズとは

スティール・パートナーズ(Steel Partners)はアメリカの投資ファンドで1993年にウォーレン・リヒテンシュタインによって設立されました。ファンド名のスティールは当初、鉄鋼銘柄に投資したことに由来しています。

スティール・パートナーズは積極的にM&Aを行う投資手法を取っており、買収企業の経営について提言もするため、いわゆる「モノ言う株主」として知られています。

日本での活動でいえばブルドックソース買収の件が有名です。これは、結果的にスティール・パートナーズの負けに終わりましたが、ヘッジファンドや企業買収について理解を深めておくことは投資家として非常に重要です。

 

 

ブルドックソース買収について

2007年、スティール・パートナーズはブルドックソースの全株取得を目指して公開買い付けを発表し、買付け価格を1株1,584円としました。

これに対してブルドックソース側は、企業価値の毀損と株主利益を損なうとして買収防止策を講じました。それが”ポイズン・ピル”と呼ばれる方法です。

ポイズン・ピルとは買収しようとしている株主以外の株主に対して新株を発行し、買収側の持ち分比率を下げる戦略です。

ブルドックソースは全株主に対して株式1単元につき3つの新株予約権を発行しました。そして、スティール・パートナーズ以外の株主には新株予約権1つに対して1単元の株式を発行し、スティール・パートナーズには金銭を交付するとしました。

そうすることで、スティール・パートナーズの持ち分比率を4分の1以下にしようとしたのです。

これに対して、スティール・パートナーズは株主平等の原則に反しているとして、新株予約権の差し止めを求め、東京地裁に申し立てを行いました。

東京地裁は短期的な利益目的で売買を行い、企業価値を損ねるとしてスティール・パートナーズの申し立てを却下しました。スティール・パートナーズ側はこれを不服として抗告し、最高裁までもつれましたが、スティール・パートナーズの申し立ては却下される結果となりました。

日本人としては買収を上手く阻止した案件に思えますが、違う角度から見ると外国人投資家には日本の株式市場は未成熟だと印象付けた案件、とも言うことができます。

ウォーレン・リヒテンシュタインはこの結果を受けて「新株予約権(ポイズン・ピル)は株主を差別するもの」といった言葉を残しています。

それまで、スティール・パートナーズの保有する株は、株主還元策への期待などから上昇する傾向にあったのですが、敗訴直後は売りが集中して株価が下落するなど、買収失敗の打撃は大きかったようです。

ただ、管理人自身の考えを述べておくのであれば、2007年時点ではスティール・パートナーズの買収は失敗に終わったものの、現在同じような案件が生じたとして、同じ結果になるとは限らないと考えられます。

近年は日本でも、日本の株式市場も成熟度が増しており、裁判の判例などもアメリカやヨーロッパといった金融先進国の例に

環境が刻々と変わっているためです。

 

 

まとめ

株式市場では企業買収といったイベントが起こることがよくあります。それに応じて株価も大きく動くことがあるため、正しく評価できれば多大な利益を得る可能性があります。しかし、そのためには買収が企業価値にどういう影響を与えるのか、そもそも買収は成功するのかといったことを正確に判断できなければなりません。個人投資家には難しいそういった判断をして投資を行っているのがヘッジファンドなのです。

 

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