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2016年09月19日

Pershing Squareにみるアクティビスト投資の成功事例

 

サマリー

・パーシング・スクエアとは、アクティビスト投資家のアックマン氏率いる米大手ヘッジファンド

・パーシング・スクエアの代表的な投資として、P&G株への投資、アラガン買収、ビーム分社化とその売却などが挙げられる

・とりわけ、サントリーによるビーム社の買収において、パーシング・スクエアは多額の利益を得たとみられる

 

 

Pershing Squareとは?

Pershing Square Capital Management(パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント)とは、アクティビスト投資家のWilliam Albert Ackman(ウィリアム・アルバート・アックマン)率いる米大手ヘッジファンド運用会社です。

 

アックマン氏は、アクティビスト投資の戦略を上手く用いて巨額の利益を上げている投資家の一人です。ここでは、アックマン氏がパーシング・スクエアを通じて行った代表的な事例について見てみましょう。

 

 

P&Gに対する経営改革要求

2012年、パーシング・スクエアは、一般消費財メーカー大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の株式を4%超取得しました。投資に要した金額は18億ドルにも上ります。

 

P&Gは、低価格の競合品やプライベート・ブランド商品に市場シェアを奪われ、業績が低迷していました。このP&Gの苦境を受けて、アックマン氏はP&Gの大株主となった上で、アクティビストとしてP&Gの経営改革を強く要求したのです。

 

アックマン氏による経営圧力が一因となり、P&Gは予定した人員削減の規模を2倍以上に拡大し、また、自社株買いの規模を50%引き上げて60億ドルに増額させるに至りました。さらに、アックマン氏は、P&Gの当時のCEOを退任させ、P&Gにおいて高い経営実績を持つアラン・ラフリー氏の就任を後押ししたと考えられています。

このP&Gの一件は、妥協せず経営改革を徹底して断行させるアクティビストとしてのアックマン氏の姿勢をよく示しているといえます。

 

 

アラガン株への投資で26億ドルの利益を上げる

2014年、パーシング・ スクエアは、カナダの製薬会社バリアントと共に、米国の製薬会社アラガンに対して買収提案を行いました。製薬業界の再編により、M&Aによる企業規模の巨大化の機運が高まったことが背景にあります。アックマン氏は当時のアラガン株を割安と判断し、バリアントによるアラガン買収を成立させることによって高リターンを狙ったものと考えられます。

 

しかし、アラガンは買収提案を拒否したため、買収に関する交渉は困難を極めました。アックマン氏は敵対的買収に方針を切り替えましたが、アラガンはパーシング・ スクエアなどに対して訴訟を起こすなど両陣営の対立は深まっていきました。

 

当時このアラガン買収の行方は非常に注目されていましたが、結果として、アラガンは他で買収提案を受けていた米後発薬大手のアクタビスと合意し、アラガンはアクタビスに買収されることが決まりました。つまり、パーシング・ スクエアなどの買収提案は失敗に終わったのです。しかしながら、買収提案が失敗に終わっても尚、パーシング・ スクエアは、アラガン株をアクタビスに売却することで約26億ドルの利益を上げました。

業界再編などによる企業のM&Aの中に、ヘッジファンドにとって利益追求の大きなチャンスがあることがよく分かる事例だと言えます。

 

 

サントリーの米ビーム買収

同じく2014年、サントリーホールディングスは、バーボン「ジムビーム」などの商品で知られる米ビーム社を総額160億ドルで買収すると発表しました。この巨額買収によって最も利益を得たのが、アックマン氏率いるパーシング・スクエアだと言われています。

 

元々ビーム社は、米家庭用品メーカーのフォーチュン・ブランズの事業の一部でした。このフォーチュン・ブランズの分社化を進めたのがアックマン氏でした。フォーチュン・ブランズは住宅関連事業、ゴルフ用品事業、蒸留酒事業など多角的な経営を行っていましたが、アックマン氏は各事業を分社化させることで企業価値が高まると考えたのです。

 

アックマン氏は、フォーチュン・ブランズ社を3分割した後、分社化した各企業を他社に売却し、多額の利益を上げていました。その分社化した企業の一つだったビーム社の売却先が、サントリーでした。アックマン氏率いるパーシング・スクエアはビーム株を12.8%保有する筆頭株主だったため、サントリーによるビーム社の買収完了により、パーシング・ スクエアは多額の利益を得たと見られています。ビーム社などが分社化される前の親会社フォーチュン・ブランズの時価総額は70億ドルに過ぎなかったにも関わらず、分社化されたビーム社のみの買収額が160億ドルと高く評価されたことは、アックマン氏にとっても嬉しい誤算だったかもしれません。

 

「事業の分社化」というアクティビスト投資の戦略が、ときに大きな利益を生むことがよく分かる事例だと言えます。

 

 

まとめ

アックマン氏率いるパーシング・スクエアの投資に対する一貫した姿勢は、一般投資家にとっても学ぶところの多いものと考えられます。パーシング・スクエアのような海外の大手ヘッジファンドの動向にも注目してみると、今後の投資先を検討するに当たって何か有益な示唆が得られるかもしれません。

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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