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2017年02月12日

サブプライムローンの破綻に賭けた世紀の投資家 − 隻眼の相場師マイケル・バーリ

「時間は伸縮自在の連続体だ」 − マイケル・バーリ

 

サマリー

・医者から投資家に転身した、異例の投資家マイケル・バーリ。

・バリュー投資を貫いたバーリは、自身の設立したヘッジファンドにおいても、圧倒的なパフォーマンスを収める

・サブプライムローンの破綻にかけたマイケル・バーリは、CDSに多額の投資を行い、世紀の大儲けをした。

 

 

隻眼の相場師マイケル・バーリ

マイケル・バーリ

マイケル・バーリ(Michael Burry)は医師から投資家に転身した異例の人物です。バーリは、2歳のときに珍しい型の癌を患って、腫瘍を除去する手術を受けた際、左の眼球を摘出されて以来、片方の目を義眼とし、「隻眼の相場師」と呼ばれるようになりました。

勉学にも長けていたバーリは“特に難関とも思えなかった”という理由で、医学部に進学し医者になりましたが、医学に対する情熱がなかったがために、医者としての職務に嫌気がさし、予てから興味を持っていた株式投資の世界に足を踏み入れることとなります。

 

 

株式市場に強いこだわりを持つ

小学生のころ、父親に新聞の株価一覧を見せられ、「株式市場は歪みきった場所だから決して信用してはいけないし、まして投資などするものではない」と聞かされて以来、その仕組みがバーリをずっと魅了し続けていました。

株式市場に関する本を趣味として読み始めて程なく、チャートにもグラフにも波動にも株のプロを自称する多くの人間たちの長広舌にも、まったく論理などないことを理解し「わたしは自分を“バリュー投資家“だと認定しました」と後に述べるようになります。

 

ベンジャミン・グレアムが様式化した“バリュー投資”は、時代遅れな企業や不当に過小評価されている企業の株を、清算価格より安く仕込むために、あくなき探求の姿勢が求められる投資手法でした。

この“探求の姿勢”こそ、バーリの性格にマッチしており、やがてバーリはこの世界で大きな成功を収めることになります。

 

マイケル・バーリ“元”医師は「サイオン・キャピタル」というヘッジファンドを設立します。医師時代からブログなどで情報発信をしていたバーリは、投資の世界でも名が通っており、資金調達も順調に行うことができました。

バーリは100万ドルをやや上回る資金を元手にサイオン・キャピタルを始動させ、創業1年目の2001年にはS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)500種株価指数は年間で11.88%下落している中、+55%の収益を記録。翌年には、株価指数が22.1%下落したのに対し、さらに16%の上昇。2003年には、株式市場の+28.69%上を圧倒的に上回る+50%の収益を得ています。

 

事業を始めたときのマイケル・バーリは“適正な”動機を忘れないように心がけていたと言います。典型的なヘッジファンド・マネジャーは預かり資産の2%を手数料として受け取り、莫大な額の他人の金を集めるだけで収益を得ていました。

しかし、サイオン・キャピタルは、投資家に非常に少額の経費しか請求せず、株式投資において収益を得ることこそ、事業の本質だということを非常に大切にしていました。

 

 

過小評価されているものを見抜く才能

バーリはなんのレバレッジも用いず、株の空売りもしませんでした。普通株を買う以上のことはせず、部屋にこもって財務諸表を読む以上に複雑なこともしません。誰にでも入手可能な <10Kウィザード> (※日本でいう四季報のようなもの)の情報とデータを丹念に読み、裁判所の裁定、成立した交渉、政府の規制変更など、企業の価値の変動につながりそうな情報に何にでも目を光らせていました。

 

バーリの投資した事例に以下のようなものがあります。

 

事例:アヴァンド!コーポレーション

アヴァンド!は競合企業からソフトウェアのコードを盗んだかどうかで起訴されていましたが、一方で同社は銀行口座に1億ドルの残高を持ち、年間1億ドルのフリー・キャッシュ・フローを生み出しているにもかかわらず、時価総額はたった2.5億ドルでした。

2001年6月、バーリは始めてアヴァンド!の株を1株12ドルで買い付けました。しかし、その後アヴァンド!の経営陣が服役し、罰金を支払うことになり、株価は下落し続けます。それでもバーリは買い足しを続け、最終的に1株2ドルに落ちるまで、ひたすらに買い足しを続けていました。

そして、アヴァンド!の筆頭株主になったところで、社に経営の改善を求め、結果として、4ヶ月後にはアヴァンド!の株価は22ドルまで跳ね上がることになります。

ある投資家は言います。

「あれが、マイク・バーリの本領ですよ。10倍に跳ね上がるけれど、その前にまず半分に下がる」

 

 

サイオンは株式市場に対して“ロング”する、つまり株が上がる方に賭ける志向のファンドでした。その理由についてバーリはこう言っています。

「株を空売りする際のリスクには、理論的に上限がないというのも、ショートを嫌う理由の一つである。空売りのリスクの最低値はゼロだが、最高値は天井知らずなのである。」

 

 

まとめ

バーリのような経歴をもつ投資家は珍しいかもしれません。しかし、注目すべきは彼の経歴ではなく、投資家としての実力です。バリュー投資の真髄は、本質的な価値の高いものをきちんと見極めて、それの価値が上がるまでしっかりと保有・買い付けを行うことです。

短期的な価格の変動や小手先のテクニックに左右されず、きちんとした“戦略”をもって投資を行うことが非常に重要であることを、バーリから学ぶことができます。

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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