記事詳細

2016年01月21日

米国の利上げがマーケットを動かす – FOMC徹底解説 –

 

サマリー

・2016年の年明けから始まった金融市場の混乱の背景にあるのは、米国の金融政策の転換

・米国は2008年以来の金融緩和から、金融引き締めに転換し利上げのタイミングを図っている

・FOMCは投資する上で必ずチェックすべき材料の1つ。市場の先行きを見通すため、FOMCのスケジュールを押さえておこう

 

 

なぜ米国の利上げが投資において重要なのか?

日々値動きする株や為替。ときには、短期間で10%前後の乱高下を見せることがあります。最近では、2016年2月当初120円台をつけていたドルが、その後10日ほどで111円台まで下落。その円高ドル安のトレンド(市場の流れ)は4月になっても続いています。また、株式市場においては、日経平均株価が2016年の年明けから5日連続下落。これは1949年に東京証券取引所が再開してから戦後初でした。その後、2015年末から2016年4月初めにかけて、日経平均株価は2,800円以上下落(下落率約15%)するに至っています。

 

これらの下落の原因には中国経済の減速や原油価格の下落などが挙げられますが、その背景には米国の金融政策の転換もまた大きく関わっています。米国の金融政策が世界のお金の流れを決定づけ、世界経済に多大な影響を与えるためです。

 

現在、米国は2008年以降の金融政策を転換し、自国の金利を引き上げようとしています。では、この金融政策の転換とはどのようなものでしょうか。また、世界経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

そもそも金融政策とは、市場に出回る通貨の量をコントロールして、物価の安定と景気調整を図ることをいいます。一般的に、景気が過熱すると金融引き締め(市場の通貨量を減らすこと)を行い、反対に、景気が落ち込むと金融緩和(市場の通貨量を増やすこと)を行います。典型的には、政策金利の利上げは金融引き締めに当たり、逆に利下げは金融緩和に当たります。利上げすれば、企業融資や住宅ローンなどの金利が上昇し、お金の流れが弱まって経済活動を抑制できます。一方、利下げはその逆で市場の通貨量を増やし、お金の流れを活性化させ経済活動を促進できます。

 

ここで、世界の通貨取引高に関するデータを見てみましょう。下表は、通貨別の世界取引高シェアです。

通貨別の世界取引高シェア

このデータは通貨の「売り」と「買い」の合計を表しているので、シェアをすべて足すと200%になります。この表によれば、米ドルは世界の通貨取引高の半分近くを占めています。こうしてみると、改めてドルが世界で最も流通している基軸通貨であると確認できます。

 

この基軸通貨たるドルの流れが弱まれば、世界経済を減速させます。反対に、ドルの流れが強まれば、世界経済は活性化し、行き過ぎると過熱します。実際、米国は2008年リーマン・ショック後に行った金融緩和により、市場に約4兆ドルのマネーをばらまきました。日本円にして約320兆円です(ドル=80円換算:QE3後の2012年10月1日基準)。この金融緩和が一因となり、世界経済はリーマン・ショック以降の不況からある程度脱することができたのです。

 

しかし、米国は2014年終盤から金融緩和政策を転換し、徐々に利上げの時期を探るようになりました。米国内の住宅バブルの再発など、行き過ぎた金融緩和の悪影響を懸念したからです。そして、2015年12月、実際に米国は利上げを行いました。米国の政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の目標を、それまでの「0~0.25%」から「0.25~0.5%」に引き上げたのです。この利上げにより、世界のお金の流れが大きく変わり、2016年からの株・為替の変動の一因となっています。

 

以上のように、世界経済の動向を決定づける最大の要因の1つが米国の金融政策です。市場の乱高下といった短期的なトレンドに振り回されることなく、中長期での資産形成を目指すために、米国の金融政策の変化を見極める必要があります。

 

 

米国の金融政策を決めるFOMCとは?

米国の金融政策は、米国の中央銀行が担っています。米国の中央銀行は米連邦準備制度理事会という機関で、通常、FRB(Federal Reserve Board)と呼ばれます。日本で言えば、日本銀行に当たります。現在、FRB議長は経済学者のジャネット・イエレン氏です。そして、FRBが米国の金融政策を決定するために開催する会合が米連邦公開市場委員会です。この委員会の略称がFOMC(Federal Open Market Committee)で、FOMCによる政策決定が世界経済に大きな影響を及ぼします。

 

FOMCは年8回(毎回2日間)、約6週間ごとにワシントンで開催されます。FOMCのメンバーは、FRB理事7名と米国内の各地区の連邦銀行総裁のうち5名で構成されます。これら12名が投票によって政策金利を決定します。決定された政策金利はFOMC後に発表されます。加えて、四半期末(3月、6月、9月、12月)に開催されたFOMC後はイエレン議長の記者会見も行なわれる予定です。

 

以下、今後の2016年中のFOMC開催スケジュールを掲載します。

 

2016年FOMC開催スケジュール

■ 4月26-27日: 声明発表は27日午後2時(日本時間28日午前3時)

■ 6月14-15日: 声明発表は15日午後2時(日本時間16日午前3時)※イエレン議長会見:日本時間午前3時半予定

■ 7月26-27日: 声明発表は27日午後2時(日本時間28日午前3時)

■ 9月20-21日: 声明発表は21日午後2時(日本時間22日午前3時)※イエレン議長会見:日本時間午前3時半予定

■ 11月1-2日: 声明発表は2日午後2時(日本時間3日午前3時)

■ 12月13-14日: 声明発表は14日午後2時(日本時間15日午前4時)※イエレン議長会見:日本時間午前4時半予定

 

2015年12月の時点では、2016年中に米国金利の追加利上げを4回行うとしていました。しかし、2016年3月に開催されたFOMCでは、政策金利の据え置きが決まり、同時に、追加利上げのペースを年2回に落とすことも発表されました。年明け後の世界経済の弱含みを懸念してのことです。年内にどこまで利上げが行われるか定かではありませんが、まず6月までに利上げが1回行われるとの予想が大勢です。

 

 

まとめ

米国の金融政策の動向は、株・為替など金融市場の先行きを見通す上で欠かせない材料の1つです。このような重要な情報を1つずつ丹念に押さえていくことで、投資が成功する可能性を高めることができます。米国の金融政策の基礎はご理解頂けたかと思いますので、今後のFOMCに注目してみてください。