四季報はここをみろ! 〜バリュー投資家流の見方〜
サマリー
・四季報には重要な欄とそうでない欄が存在する
・資産に関係するパートは重要、それ以外は読み飛ばしてよい
・さらに詳細な分析を進める為には四季報だけでは情報が不十分。有価証券報告書まで読む必要がある
投資をする上で、会社四季報を読み込むことは必要不可欠であると言われますが、あの分厚い本を前にして、読む前から心がおれてしまう人も少なく無いことでしょう。
しかし、げんなりする必要はありません。実際問題として、四季報に記載されている全ての情報に目を通さないといけないということはなく、ポイントを掴んで効率的に読み解く事が可能です。今回は、管理人の視点から、四季報を実際にどのように読み解いていくべきか、お伝えしたいと思います。
四季報って何?
四季報とは、東洋経済が年に4回発行している、企業の業績/財務に関する情報が簡潔にまとまった書籍のことを指します。基本的には、公開されている各社の最新の情報を元にして、東洋経済が独自に執り行った取材による分析を追加し、さらにそこから予想される企業の業績予想まで載せています。
四季報において記載されている各社の情報は、以下の通りです。
・月足長期チャート
・株価指標
・業績や最近の動向
・株主構成
・財務と財務指標
・資本に関する情報
・配当情報
・企業業績
・四季報予想比較
各項目はここを見ろ!重要な情報とそうでない情報とは
様々な項目や数値が掲載されている四季報ですが、実はそのすべてに細かく目を通す必要があるわけではありません。ここでは各項目について、注目すべき点や、管理人なりの捉え方を紹介していきたいと思います。
月足長期チャート
その企業の、株価チャート(月足)が載っています。
月足チャートは、長い期間の過去の株価動向を把握するものです。チャートを分析して、株価がどのような推移を示しているかを元に投資を行う投資家にとっては非常に重要な項目となりますが、管理人は企業の本質的な価値にのみ注目して投資を行うこと(バリュー投資)を心掛けている為、短期的な株価の変化に対して一喜一憂するということはありません。
企業の株価は、連日変動しますが、企業の本質的な価値は簡単に変わるものではないからです。
株価指標
PER、PBR等と言った株式指標について記載されている項目です。
例えばPERとは、株価と企業の収益力を比較することによって、株式の投資価値を判断する際に利用される尺度です。時価総額÷純利益、もしくは、株価÷一株当たり純利益で算出されます。株価に対して純利益が多ければ数値は低く、純利益が少なれければ数値は高くなります。
四季報には、PERの予想値、実績値、平均値などが記載されています。PERは15倍を下回ると割安と言われていますが、業種によってPERが高くなりがち、低くなりがち、といった傾向が存在する為、同業他社との比較をして相対的に割安かどうかを判断する姿勢が必要です。
株主構成
株主構成とは、主にその企業の株式をたくさん持っている大株主といわれる法人、個人の名前を載せる項目です。一般に、機関投資家や創業者の一族、そして自社の持株会社、親会社、等々で構成されています。
これは一個人投資家として、というよりも私が資産を預け入れているファンドの目線になりますが、特に「アクティビストファンド」と呼ばれるような積極的に経営に関わって行くタイプのファンドにとって、企業価値を上げるような取り組みが出来るかどうかは、提案する内容以前に、株主の構成や経営陣の面子によって決まってしまう側面が大きいのです。例えば創業者であり現会長のポジションにいるような人が実質的に50%以上のシェアを持っているような場合、概ね筆頭株主の判断で会社の方針を決めることが出来ます。アクティビストファンドは、投資をするにあたってどの程度自分たちの提案で会社を実際に変えて行く事が出来るか、株主や経営陣の構成をよく分析して考えるのです。
初心者の内はなかなか注目しづらい項目ではありますが、意外と重要な情報ではあります。
財務と財務指標
財務に関して記載がされている項目です。総資産・負債・自己資産などといった資産面の情報、資産に対して利益がどれくらいあるのかという収益性を見るROAやROEといった指標、キャッシュフロー状況などさまざまな企業の財務状態を知ることができます。
総資産に対して自己資本がどれくらいあるのかを示す自己資本比率や収益性を表すROE、業績以外の企業の力を測るためのそれぞれのキャッシュフロー等々、一般的に重要と言われている指標は色々あります。管理人はこの中でも会社の保有する「資産」の面に着目することが特に重要であると考えており、それを把握する目的でこの財務分析欄に目を通します。
資本に関する情報
株式分割や増資、減資など企業の資本の異動(資本金の変化)を見ることができる項目です。具体的には、株式の増資や株式分割などに関する情報を載せています。増資をして資金を集めれば1株あたりの利益の減少懸念から株式が売られたり、株式分割をすれば株価が安くなることによる流動性の向上に繋がる等々、比較的重要な項目です。
配当情報
ここでは、配当を支払った実績の値がそのまま載せられています。過去にしっかりと配当を支払っているかどうか、そしてその配当が順調に増加しているかどうかを確認することが出来ます。
企業業績
企業の業績に関する情報が並んでいます。損益通算書と同じように、売上高、営業利益、経常利益、純利益、1株利益、配当と並んでいます。
過去の業績の伸びに加えて、未来の業績を会社がどう予想しているのか、そして、それに対して四季報はどう予想しているのかを見ることが出来ます。恐らく、このパートが最も重要であると考え、企業の業績を予想しながら会社の株を売り買いしている個人投資家は非常に多くいると思います。
しかし、管理人の視点で言えば、この「企業の業績予想」ほどあてにならない話はありません。
これからの企業の業績、未来の収益というのは、為替や世界経済の動向と言ったマクロな環境変化に加え、政府の政策、業界の状況、経営者の判断、社員、新規事業の状況…etc、数多の要因に左右されます。大企業が業績見通しや目標を掲げ、それを大幅に下方修正するなんていう話は余りにもザラにありますし、その会社の社長ですら明確なことが分からないのに、これから「会社が儲かるのか」を一個人が予想するというのは、ある意味で馬鹿げた試みだと考えます。
したがって、この項目には殆ど注目しません。
四季報予想比較
四季報情報の枠外に載っている情報です。
まず前号と比べて営業利益が増えているか、減っているかを示す前号比較の矢印、前号より営業益が上方修正されていれば、上向き矢印、逆なら下向きの矢印が付きます。なお大幅に上昇修正したなら、大幅増額、逆なら大幅減額と記されています。
そしてたまに、会社比強気、弱気という文字と共に、ニコニコマークとがっかりマークが付いている時があります。これは、その回の四季報において、会社予想の営業駅と四季報予想の営業益の比較が示されています。四季報が上回ればニコニコマークで強気、逆ならがっかりマークで弱気となります。
これは、企業業績の項目でも説明した通り、何の価値も無い項目だと判断し、全く意識していません。
以上、個人投資家のバイブルともなっている四季報ですが、正直な考えを言えば、企業の業績予想などは机上の空論になりがち、そして四季報の予想などは全くあてにならないというのが管理人の意見です。
四季報で資産に関する基本的な情報を確認し、さらに分析するに値すると思われる会社については、その会社の「有価証券報告書」を読み解く事でその価値を見極めていく、というのが賢明な手順でしょう。
まとめ
管理人が専門性の高いファンドに預け入れて運用をしている理由の1つとして、これらの綿密な証券分析作業を時間的な制約のある個人が行うのは現実的では無いから、というものがあります。
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