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2017年08月11日

親子上場を利用して収益を出すヘッジファンド

サマリー

・現在の証券市場にて、親子上場は原則解消することが推奨されている

・親子上場の問題点は、子会社側の経営戦略が親会社の意向を強く受け過ぎてしまうことで子会社側少数株主の権利が守られないことにある

・このような親子上場解消の流れを巧みに利用してアクティビスト投資を実施し、収益をあげるヘッジファンドも存在する

 

 

 

親子上場の実例、親子上場とは

2016年9月、三菱商事はローソンの株式の過半数を取得する旨を発表しました。元々三菱商事はローソンの発行株式の内33.4%を持つ筆頭株主でしたが、更に1,440億円を投じて公開買付(TOB)を実施することにより出資比率を50.1%まで引き上げ、ローソンの実質的支配権を得る運びです。

三菱商事もローソンも上場企業ですから、これにより親会社と子会社が上場している、いわゆる「親子上場」という状態になります。しかし親子上場とは、現在、証券市場で解消することが推奨されているものでもあります。

 

ここでいう親会社とは、原則、ある会社の発行する株式の50%以上を保有する他の会社をいいます。例えば、NTTはNTTドコモの株式を50%以上保有しており、NTTはNTTドコモの親会社にあたることになります。

NTTとNTTドコモのような例では、子会社であるNTTドコモは親会社と異なる事業領域にて高い成長性が期待できます。そのため、NTTドコモはNTTグループ内の戦略に従うのではなく独自の戦略にて成長を模索することが企業価値の最大化のために重要だと思われます。

このように親会社から独立した戦略をとることが、子会社の戦略として必要な場合は多くあります。しかし、基本的に子会社は親会社の支配下にあるため、親会社のグループ内戦略に従わなければなりません。また子会社の中には親会社への製品販売やサービスの提供などにより売上の大半を稼いでいる会社も多くありますので、実際問題として、子会社側の経営戦略は親会社の意向に大きな影響を受けることになります。

 

 

親子上場の何が問題なのか、証券市場の流れ

親子上場の一番の問題点は、上述した「親会社からの独立性」です。親会社のグループ内戦略によっては、子会社の経営陣や残りの少数株主の意見が、上場子会社の経営に取り入れられない可能性が非常に高くなります。

そこで証券取引所は、原則、子会社側の経営に著しい不利益をもたらすような親子上場となっている場合には解消をすすめるよう促しており、また、これから子会社が上場するというような場合には特別の審査基準をクリアする必要があるとして監視するなど、少数株主となる一般投資家を保護するために動いております。

 

 

<子会社が上場する場合の審査基準>

・上場申請会社(上場しようとする子会社)または親会社などが、どちらか一方の不利益となる取引を強制、または誘引していない。

・上場申請会社(上場しようとする子会社)と親会社などが、グ ループ外の第三者と取り引きを行う際の条件と異なり、著しく優位または不利な条件で取りき引を行なっていない。

・上場申請会社(上場しようとする子会社)が事実上、親会社等の一業部門と認められる状況にない。

 

 

親子上場を利用するヘッジファンド

ヘッジファンドの中には、この親子上場という証券市場に存在する歪みを上手くつき収益をあげる会社があります。

 

例えば、管理人のよく知るファンドの中に、映画大手の東宝がその実質的な不動産部門である東宝不動産を子会社化する為に公開買付(TOB)を行うと宣言した際、東宝不動産株を買い付けるという動きをした実例があります。

これは、東宝の提示するTOB価格が不当に安い、つまり東宝不動産の保有する帝劇ビルといった資産価値の高い不動産を考慮した価格になっていないという点に目をつけたものです。ファンドとしてあえて子会社側の少数株主になり、証券市場の原則的な流れに乗って東宝のTOB価格が不当に安いということで訴えを起こす、アクティビスト投資の一環となります。

 

実際に、東宝が東宝不動産を子会社化するに当たって提示した価格は、東宝不動産の実質的な資産価値から言えば不当に安いものになっていました。そのため、ファンドとしてこのような動きをすることはファンドに収益をもたらすというメリットがある上に、その他子会社側の少数株主の権利を守る上でも意義のある活動と言えます。

 

まとめ

いずれにしても、このようなアクティビスト投資は相当の資金力と高い専門性があって初めて実現するものであり、こういう動きが出来るというところに、一個人としてヘッジファンドに資産を預ける意味があるのだと考えられます。

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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