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2016年05月19日

投資家にとっての「ふるさと納税」

 

サマリー

・ふるさと納税とは、自治体への寄附によって所得税などが控除され、さらに各種特典が得られる制度を指す

・投資家にとっても、ふるさと納税を利用すれば各自治体の特典を選んで受け取れるメリットがある

・ふるさと納税による税金の控除額には上限があるため、寄附前に上限額を確認しよう

 

投資の利益には、当然ながら税金がかかります。どうせ税金を課されるならば、少しでもメリットのある納税をしてみてはいかがでしょうか。税金の納め方の一つに、「金額に応じて特典が得られる」というユニークな制度が存在します。

そんな制度こそ「ふるさと納税」と呼ばれるものです。ここでは、投資家にとってメリットになると考えられる「ふるさと納税」の仕組みを解説します。

 

 

そもそも「ふるさと納税」って?

「ふるさと納税」とは、自治体に寄附を行った場合、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から一定額が控除される制度です。ふるさと納税の仕組みは、大まかにまとめると以下のようになります。

  •   ・好きな自治体(都道府県又は市区町村)を選んでお金を寄附する
  •    (寄附先の自治体は寄附者の出身地に限らず、どの自治体にも寄附が可能)
  •  ・寄附金額に応じて、所得税と住民税が控除される
  •  ・さらに寄附した自治体から特典を受け取れることもある

 

例えば、年収600万円で独身サラリーマンのAさんがふるさと納税のための寄附を検討したとします。Aさんに課される税金は、毎年変わらず所得税150、住民税30万円だったと仮定します。Aさんは温泉が好きだったので、「ふるさと納税の寄附をしてくれたら、地元の温泉の宿泊券をプレゼントします」とホームページに書いてあった北海道の沼田町に対して65,000円の寄附をしました。すると、まず寄附を行って数週間後に、Aさんの下に温泉の宿泊券が届きました。さらに、寄附した年の翌年、寄付した65,000円のうち、2,000円を超えている63,000円がAさんの所得税と住民税から控除(減額)されることになりました。

結局、Aさんが65,000円を寄附したおかげで、Aさんは63,000円の税金を免除されているため、実質2,000円で温泉の宿泊券を得ることができたわけです(この事例で用いている金額はあくまで目安ですので、ご了承ください)。このケースで言えば、温泉の宿泊券に2,000円以上の価値があった場合、得をしている事になります。

 

つまり、上記事例で言えば、通常通り税金を払うだけの場合と、ふるさと納税制度を利用した場合を比較すると次の通りになります。

通常通り納税した場合

所得税150万円+住民税30万円

 =合計税額180万円(特典なし)

ふるさと納税制度を利用した場合

所得税150万円+住民税30万円+寄附金6.5万円-税金控除6.3万円

 =(実質の)合計税額180万円+ 寄附の自己負担分2,000円(+特典に「温泉宿泊券」)

 

上記事例はほんの一例に過ぎず、各自治体は地元の名産品などをふるさと納税の特典にしています。具体的には、肉・魚介類などの食材や地域の工芸品、あるいはゴルフ場利用券やスキーチケットなど、各自治体は寄附金額に応じて多種多様な特典を実施しています。

 

要するに、ふるさと納税制度とは、国が国民に対して「どこかの自治体に寄附してくれたら、基本的に寄附した金額と同額の税金を免除してあげますよ。但し、国民の皆さんには寄附金のうち2,000円以上を必ず自己負担してもらいますが、上手く制度を利用すれば皆さんの気に入った品がお得に手に入るかもしれませんよ」と呼び掛けているようなものと考えられます。ふるさと納税は、税金を課される立場の我々にとっては、「納税の代わりに寄附することを条件に、各自治体の特典から自分の気に入ったものを選んで受け取ることができる」というメリットを提供してくれていると言えます。

 

 

投資家が知っておくべき「ふるさと納税」の注意点

投資家にとっても、ふるさと納税はメリットのある制度だと考えられます。というのは、株式投資で得た利益の一部を自治体に寄附した場合にも、ふるさと納税制度が利用できるからです。株式の譲渡益などに税金がかかる場合、通常通り納税するのではなく、自治体に寄附して特典を受け取った方がいいかもしれません。「御礼の品など特典を受け取れる」という点において、ふるさと納税は、投資した株式に応じて企業の製品などを受け取れる株主優待制度に似ていると言えるでしょう。

 

しかし、ふるさと納税の注意点として、ふるさと納税によって可能な税金の控除額には一定の上限があることが挙げられます。前述のAさんの例で考えると、Aさんが寄附金65,000円に留まらず、10万円でも20万円でも自治体に寄附して多くの特典を受け取りたいと思うかもしれません。しかし、ふるさと納税制度による税金の控除上限額は、年収や家族構成などに応じてあらかじめ決まっています。年収600万円で独身のAさんの場合、控除上限額はおよそ77,000円になるとされています(総務省「ふるさと納税のしくみ」参照)。つまり、Aさんが77,000円寄附した場合、税金控除額は自己負担分2,000円を除く75,000円になります。一方、たとえAさんが10万円寄附したとしても、税金控除額はやはり約75,000円に限られることになり、残り約25,000円については全額自己負担ということになってしまいます。ふるさと納税のメリットは、「寄附した金額のほぼ全額が税金の控除によって実質キャッシュバックされる」という点にあるわけですが、寄附金額が控除の上限額を超えるとこのメリットが薄くなっていくため、意図しない自己負担を行わないよう注意が必要です。

 

「ふるさと納税による税金の控除額には一定の上限がある」という注意点は、株式譲渡益など有する投資家がふるさと納税を利用する場合にも当てはまります。

 

下表は、株式投資などの利益について、投資家がふるさと納税を利用した場合の一般的な税金控除上限額の一例を表しています(基礎控除のみで申告分離課税を行った場合の簡易的な税金計算による)。投資家がふるさと納税を利用する場合、きちんと各自の控除上限額を確認する必要があります。

投資利益と税金控除上限額一覧なお、上記表はあくまで簡易的な目安であり、各自の個別的な控除上限額については、各自治体にお問い合わせ頂くか、税理士などの専門家にご相談ください。

 

 

まとめ

ふるさと納税は、投資家に対して大いにメリットを提供してくれる場合があります。税金の控除上限額などに注意しつつ、制度を有効活用できるとよいでしょう。