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2016年07月20日

過去の成功事例にみる「バリュー投資」

サマリー

・「バリュー投資」とは、現時点での株価が割安であれば買い、割高であれば売る投資手法

・世界的なバリュー投資家のバフェット氏は、ワシントンポストの「本質的価値」を見抜き、大きな利益を上げた

・過去の事例などを参考に、投資対象の「本質的価値」を見抜くポイントを知ることが必要

 

 

バリュー投資とは何か

「バリュー投資」とは、主に株式投資における投資手法の一つを指します。現時点での株価がその株式の「本質的価値」よりも割安であれば買い、「本質的価値」よりも割高であれば売る投資手法です。例えば、ある企業A社の株式の本質的価値が1万円と仮定した場合、理論的にはA社の株価が1万円未満ならば割安として買い、A社の株価が1万円超ならば割高として売るということになります。

 

バリュー投資の考え方自体はシンプルといえますが、その実践は一筋縄では行かないと考えられます。というのは、バリュー投資における株式の「本質的価値」とは将来の企業業績や市場環境の不確実性など多数の不確定要因によって刻々と変化する概念であり、算出の容易なものとは必ずしもいえないからです。

 

そこで、実践の難しいバリュー投資を成功させるヒントを得るために、過去のバリュー投資の成功例を見てみましょう。

 

 

“世界ナンバー1の投資家”に見るバリュー投資の実例

「バリュー投資家」として大変有名な人物が、“世界ナンバー1の投資家”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。バフェット氏は2016年5月現在約658億ドル、日本円にして約7兆円以上(同月の為替1ドル109円換算)にも上る個人資産を保有しています。ブルームバーグによると、バフェット氏は世界の億万長者の中で資産総額第3位にランクされています。この巨額の資産を築いた投資手法がバリュー投資です。

 

バフェット氏の行ったバリュー投資の一つがワシントンポスト株への投資です。1973年、バフェット氏は、38ドルから16ドルに株価が急落していたワシントンポスト株に対して、1,060万ドルの投資を行います。当時、ワシントンポストはニクソン政権の一大スキャンダルとなった「ウォーターゲート事件」の真相を究明する報道をほとんど単独で行っていたため、政治的な圧力により窮地に立たされていました。そのため、同社の存続が危ういのではないかと株価が急落していたのです。

 

しかし、バフェット氏は後にワシントンポスト株への投資について「何ら心配することはなかった」と語っています。その理由は、ワシントンポストの当時の経営陣が、保有していた多数の自社株を窮地の最中でも全く手放そうとしなかったため、バフェット氏はワシントンポストの経営が安泰だという確信を得ていたからです。また、当時ワシントンポストの純資産が4億ドルでかつ無借金経営だったにも関わらず、同社の時価総額はたったの8,000万ドルとなっていました。ワシントンポスト株は財務的にも大変割安な状態だったのです。

 

結局、ワシントンポストに対して投資した1,060万ドルは、投資の約10年後に5億ドル程度にまでなりました。ワシントンポストの株価はおよそ10年で約47倍になったのです。

 

今回のバフェット氏の事例では、以下の3つがポイントになると考えられます。

 ①暴落時こそ買う

 ②財務分析を行う

 ③経営陣に注目する

 

今後、バリュー投資をやってみようと思う方にとって、このバフェット氏の事例は大きなヒントになるのではないでしょうか。

 

 

バリュー投資で成功した日本人投資家

次に、日本人投資家がバリュー投資で成功した事例を見てみましょう。

 

個人投資家の片山晃氏は、65万円の元手で始めた株式投資により、運用資産を25億円まで増やすことに成功した投資家です。その資産は3,800倍以上に膨らんだことになります。

 

片山氏は当初デイトレードを行っていましたが、リーマン・ショックによって考えを変えたと語っています。暴落した株式の中に、その企業価値よりも割安になっている株式が必ずあるはずだと考えたのです。

 

その後、片山氏は連日朝7時から夜11時まで、TDネット(東証適時開示情報閲覧サービス)で公表される企業の開示情報すべてに目を通し、株価が割安に放置されている株式に投資したと言っています。この中長期的なバリュー投資に方針を切り替えることにより、資産を大きく増やすことができたとされています。

 

この片山氏の事例についても、バフェット氏の事例と同様、暴落時の投資や財務分析が大変重要なものだと考えることができます。バリュー投資について深く理解するには、以上のような過去の事例などから、投資対象の「本質的価値」を見抜くコツを知ることが不可欠と言えるでしょう。

 

 

まとめ

バリュー投資を成功させるためには、投資対象の「本質的価値」を把握する必要があります。しかし、その「本質的価値」を正しく分析することは容易とはいえません。投資対象の「本質的価値」を見抜くポイントを考えるに当たって、今回取り上げた事例などをご参考にして頂ければ幸いです。

 

【参考記事】

私が出会った「ステキな投資家」「お金より大切な物語」 INVESTOR4 片山晃

海外投資、ヘッジファンド投資の実践録

バリュー投資の父 “ベンジャミングレアム” の投資方法とその弱点

 

片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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