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2016年10月20日

米雇用統計とは?知っておくべき米国の経済指標5選

 

サマリー

・米雇用統計は、FOMCを左右するなど金融市場に多大な影響を与える可能性がある

・他にも、米GDP成長率、米小売売上高、ISM景況感指数、住宅着工件数などの重要な経済指標がある

・米国の経済指標が世界の株式や為替などに大きく影響するため、その発表時期などを知る必要がある

 

「2016年6月3日に発表された“米雇用統計”が円高・ドル安を加速させるきっかけとなった」というニュースが大きく取り上げられました。この“米雇用統計”を始めとする米国の経済指標には、世界の株式や為替などに多大な影響を与えるものがあります。ここでは、これから投資を始める方に是非知っておいて頂きたい5つの重要な米国経済指標をご紹介します。

 

 

米雇用統計

米雇用統計とは、米国労働省が発表する雇用情勢についての経済指標を指します。雇用統計は十数項目の経済指標をまとめて表した総称で、特に「非農業部門就業者数」と「失業率」の項目が注目されています。「非農業部門就業者数」や「失業率」などの雇用情勢の推移が米国の個人消費などに大きく影響し、米国の将来の景気を左右する要因となると考えられているからです。また、雇用統計の結果がFOMCによる金融政策の動向にも強く影響すると言われています。

_■ 関連記事:米国の利上げがマーケットを動かす – FOMC徹底解説 –

 

米雇用統計については、米大手金融機関のエコノミストなどが事前に予想値を分析しており、金融市場ではその各社の予想の中央値が米雇用統計の結果と比較されています。例えば、2016年6月3日の米雇用統計では、その前月に当たる5月の「非農業部門就業者数」が発表されました。この5月の「非農業部門就業者数」の事前予想は前月比16.0万人増とされていましたが、一方、実際の結果は前月比3.8万人増と事前予想を大幅に下回る伸びとなってしまいました。このように発表結果が事前予想を大きく下回ったため、為替に大きな影響が及び、ドル/円相場は約1カ月ぶりに106円台半ばまで急落するに至りました。米雇用統計の結果により、米国の金融政策を決定するFOMCの利上げ観測が後退し、少なくとも2016年6月の利上げの可能性は低いとみられたためです。

以上のように、米雇用統計は金融市場に多大な影響を与える可能性があるため、投資家として注目しておく必要があります。

 

 

GDP成長率

米GDP(Gross Domestic Product)とは米国の国内総生産のことで、米国商務省が四半期ごとに発表しています。発表されている数値は実質GDP(物価の影響を除いた数値)で、速報値・改定値・確定値の3つが報告されていますが、最も注目されているのは速報値です。

次回の発表は、2016年7月29日の21:30(現地時間)を予定しています。米GDP成長率は実際の景気変動に遅れて示される遅行指標ですが、景気動向を確認する場合などに参照する必要があります。

 

 

米国小売売上高

米国小売売上高は、米GDPの3分の2程度を占める個人消費についての最も重要な指標です。米国の小売業など約5,000社の月間売上高を集計した指標で、この小売売上高もGDPと同じく米国商務省によって発表されています。

前月発表された2016年4月分の米小売売上高は前月比1.3%増となり、最近1年間で最大の伸びとなりました。但し、毎月ごとの数値の振れ幅が大きい傾向にあるため、単月の数値を見るだけでなく、数カ月間の数値の推移を見る必要があります。

 

 

ISM製造業・非製造業景況感指数

ISM(Institute for Supply Management)とは仕入れや流通などの業務向上を図る非営利団体の「全米供給管理協会」を指す略称で、製造業・非製造業それぞれの景況感を算出しています。まず、製造業景況感指数については、300社以上の製造業の受注状況などを各社の購買・供給管理責任者にアンケートで答えてもらい、その回答結果を集計して算出します。製造業景況感指数は0から100までのパーセンテージで表され、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示すとされています。この算出法は非製造業景況感指数についても同様で、300社以上の非製造業(サービス業など)の購買・供給管理責任者にアンケート調査を行い、0から100までのパーセンテージで算出します。

2016年5月のISM製造業景況感指数は前月比0.5ポイント増加の51.3となった一方、同月の非製造業景況感指数は前月比2.8ポイント低下の52.9となりました。ISM製造業・非製造業景況感指数は景気動向の重要な先行指標とされているため、毎月の発表結果をチェックする必要があります。

 

 

住宅着工件数

住宅着工件数とは、米国商務省経済分析局の発表する住宅の建設状況を示す経済指標を指します。一戸建てと集合住宅の統計に分かれており、全体の約8割を一戸建てが占めています。この指標により、全米の住宅投資は好調か否かが示されています。特に、月中に建設を始めた件数を示す建設許可件数は住宅投資の先行指標となるため、注目されています。住宅投資が活発になれば、消費財の需要増加により個人消費が伸びる傾向にあると言われており、住宅着工件数は米国の景気を左右する要因の一つと考えられています。

 

 

各経済指標の発表時期

下表は、今回ご紹介した経済指標の発表時期を示しています。米国の経済指標の結果によって世界の株式や為替などが大きく変動する可能性があるため、経済指標のスケジュールを常に確認する必要があります。

米国雇用統計

 

まとめ

米国の経済指標は、世界の金融市場の動向に多大な影響を及ぼす可能性があります。それぞれの経済指標の持つ意味や、それらの数値がどのように変化すると、株価・為替等々にどのように影響するかを理解する必要があります。重要な経済指標の発表時期に注意し、その発表結果を逐一チェックすることをオススメします。

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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