「金融商品取引業」の4つの業務の違い
サマリー
・金融商品取引業とは、株式や債券などの販売・勧誘、投資運用やアドバイスをする業務を行う事業をいう
・金融商品取引業には、「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資運用業」「投資助言・代理業」の4つがある
・金融商品取引業者は投資家と密接に関わる存在なので、その業務を知っておく必要がある
金融商品取引業とは何か
金融商品取引業とは、株式や債券などの販売・勧誘、投資運用に関する業務、投資に関してアドバイスする業務などを事業として行うことをいいます。これらの業務を行う場合、「金融商品取引法」という法律によって規制を受けることになります。金融商品取引法の対象とする商品は、例えば、国債、地方債、株式、投資信託などが挙げられます。加えて、投資性のある預貯金や保険、商品先物取引などについても同法の規定が適用されることになります。また、金融商品取引業を行う者は、全て内閣総理大臣に対する申請及び登録が必要になります。
金融商品取引業は、「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資運用業」「投資助言・代理業」の4つに分かれます。これら4つの業務内容について、それぞれ見ていきましょう。
第一種金融商品取引業
第一種金融商品取引業は、流動性の高い株式や債券などの「有価証券の売買・勧誘」又は「引受け」や、顧客から資金や有価証券を預かって管理する業務を行います。例えば、一般的な証券会社などが第一種金融商品取引業者に該当します。
「有価証券の売買・勧誘」とは、証券取引所に上場している株式などの売買は勿論、実際に売買が行われなかった場合における上場株式などの推奨や提案をも広く含むと考えられています。よって、顧客に対して個別株のアドバイスをする場合、原則として常に金融商品取引法の規制を受けることになるとされています。
また、「引受け」とは、企業の新株発行などに際して、その新株の一部を証券会社などが直接取得することをいいます。
第二種金融商品取引業
第二種金融商品取引業は、第一種金融商品取引業の取り扱う有価証券よりも流動性の低いものを販売・勧誘する業務を行います。例えば、「信託受益権」や「集団投資スキーム持分」などの販売・勧誘が業務の対象になります。
「信託受益権」とは、信託財産から発生する経済的利益を受ける権利をいいます。例えば、ビルを所有するAさんが信託銀行などに一旦ビルを預けて、ビルの不動産収入を上げるよう依頼したとします。依頼を受けた信託銀行が上手く不動産収入を上げた場合、Aさんはその利益を受け取る権利を得ます。このように不動産収入を受け取る権利のことを「信託受益権」といいます。そして、このAさんが持っている「信託受益権」は、他人に売却することができます。このような「信託受益権」の売買を仲介する場合などに、第二種金融商品取引業の登録を受けることが必要です。
また、「集団投資スキーム持分」とは、多数の出資者・投資家から資金を集めて投資を行い、得た利益の配当などを受ける権利をいいます。例えば、ヘッジファンドへの投資勧誘を行う場合などが「集団投資スキーム持分」の勧誘に当たり、金融商品取引法の適用を受けることになります。
このように、「信託受益権」や「集団投資スキーム持分」などは上場株式などと比較して流動性が低いといえるため、第二種金融商品取引業の対象とされています。
投資運用業
投資運用業とは、主に「投資一任業務」と「ファンド運用業務」をいいます。
「投資一任業務」とは、業者が顧客に代わり資産運用を行うことをいいます。例えば、投資する株式や債券などの分析・選定から売買の実行、資産状況の報告などを行います。具体的に、投資信託委託会社やJ-REIT運用会社などが「投資一任業務」を行っています。
また、「ファンド運用業務」とは、例えばヘッジファンドやベンチャーキャピタルなどのように、顧客から預かった資産を投資先企業の株式などで運用する業務をいいます。
投資助言・代理業
投資助言・代理業は、「投資助言業務」と「代理・媒介業務」の2つに分かれます。例えば、大手金融機関傘下の投資顧問会社などが投資助言・代理業を行っています。
「投資助言業務」とは、「A株に投資すれば○○%の利益が期待できる」などと有価証券への投資を助言し、報酬を受け取る業務をいいます。個別株などの購入を推奨したり、具体的な商品の売買タイミングについてアドバイスしたりする場合、金融商品取引法の適用を受けることになります。但し、単に将来のマクロ的な景気予測などをアドバイスするだけでは「投資助言業務」に当たらないとされています。あくまで個別株など具体的な商品に関する助言を規制している、ということになります。
また、「代理・媒介業務」とは、前述した「投資一任業務」又は「投資助言業務」を行う旨の契約締結を代理・媒介することをいいます。例えば、一般投資家と投資信託委託会社や投資顧問会社の間の契約締結を媒介した場合、金融商品取引法の適用を受けることになります。
まとめ
金融商品取引業者は、投資家にとって最も密接に関わる存在といえます。今回ご紹介した金融商品取引業の基本的な事項について、投資家として知っておくと良いでしょう。
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