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2017年01月30日

意外と身近なインサイダー取引 − 知っておきたいその事例

 

サマリー

・インサイダー取引とは、特定の情報を入手した者がその情報を利用して株式の売買等を行う事である。市場の公正性を保つ為に禁止されている

・「買収」「業務提携」「新規事業立案」といった内容が投資家の判断に影響を与える会社の重要情報とされており、国内でもこれらのイベントに伴う多くのインサイダー取引事例が存在する

・身近にも、インサイダー取引に当たってしまうような状況はいくらでもある

 

 

インサイダー取引とは

インサイダー取引とは、「会社の内部者情報に接する立場にある会社役員等が、その立場を利用し会社の重要な内部情報を知り、その情報が公表される前にこの会社の株式等を売買する行為。—引用:コトバンク」と定義されます。

会社の内部者であったり重要情報を直接手に入れた者が、情報の公開前に売買する事が出来ると、その他一般の投資家よりも圧倒的に有利な立場で動くことが可能になります。このような状況を放置しておくと金融市場の公平さが失われ、ひいては一般投資家達の金融市場全体に対する信頼が損なわれることに繋がります。「どうせまた裏で情報を握っている人達が売り買いしていて、個人投資家は情報の格差で負けるんだろう」という空気が蔓延すると、個人投資家が市場に現れなくなってしまいます。

この為、国はインサイダー取引を取り締まるのです。

 

 

インサイダー取引の事例

過去にインサイダーが事件として発覚した事例はいくつも存在します。ここでは、その中でも有名なものや身近な企業のお話をいくつかご紹介いたします。

 

 

事例1: 2007年 NHK職員

NHK報道局テレビニュース政策部の記者など3人が、2007年3月8日のニュースで報じられた特ダネ原稿を社内の端末で事前に読んでから株式を購入し、翌日に売却して、各10万–40万円の利益を上げました。

社員に事前に配られていた原稿は、東京証券取引所の1部に上場した外食産業会社の「ゼンショー」が回転寿司チェーンを買収するという内容で、報道局経済部から出たものです。

摘発された3人は、放送22分前の午後2時38分に出た原稿を読み、証券取引所の取引が終わる午後3時までに、携帯電話や自宅のコンピューターにて、買収対象会社の株式を1000—3000株購入しました。

その後、3名は懲戒免職の処分となり、さらに任期満了に伴い退任する予定になっていたNHKの橋本元一前会長は、急遽引責辞任に追い込まれました。

 

 

事例2:2013年イー・アクセス会長秘書

2013年10月、ソフトバンクが当時国内携帯電話会社4位のイー・アクセスを買収するとの情報を公表前に入手し、イー・アクセス株を買い付けた容疑で逮捕されました。

金融商品取引法違反罪に問われた被告はその後、東京地裁にて、懲役2年6月、執行猶予4年、罰金300万円、追徴金約4400万円(求刑懲役2年6月、罰金300万円、追徴金約4400万円)を言い渡されました。

インサイダー取引の違法性を社内の研修等で被告が充分に認識していた点が、本事件における上記判決の理由となりました。

 

 

 

あなたの身の回りのインサイダー

上場会社に勤める従業員が、社内の喫煙スペースで重要情報を立ち聞きしてしまった時。または、部の飲み会の席で公開されていない重要事実を聞いてしまった時。

それを元に、自社株の売買を行った場合はどうなるでしょうか?

この場合には、職務上で知った事実では無いにしても、会社の関係者としてインサイダー取引とされてしまう恐れがありますし、たとえそれが飲み会の席でであっても、情報受領者の規制対象とされてしまうことがあります。

 

 

まとめ

インサイダーを巡る白黒はその線引きが極めて難しく、この為、個人投資家が資産を運用するに当たって、充分に注意しないといけないポイントでもあるのです。