円高は必然!?金融理論でわかる金利と債券と為替の関係
サマリー
・金利と債券価格には負の相関関係がある
・金利の上昇があると短期的に見てその国の通貨は需要が高まる
・金利が高い国の通貨は長期的に見て価値が下がる
金利と債券価格の関係
利上げや利下げ、最近ではマイナス金利という言葉も聞かれるようになりましたが、金利は金融市場にどういった影響を与えているのでしょうか。ここでは、「金利と債券価格」「金利と為替レート」の関係について考えてみたいと思います。
債券価格とは債券を実際に取引する価格のことを指しますが、額面の金額とは異なることがあります。発行市場、すなわち、債券発行時の取引価格は一般的に額面通りに行われ、額面が100円なら100円で取引されますが、流通市場では時価で取引されます。償還時には額面の価格で取引されますので、収益を考えるときには利率だけではなく債券価格も考慮することが重要となります。
例えば10年で償還される利率5%、額面100円の債券があったとします。これを100円で買ったとすると、毎年5円受け取ることができ10年後には額面の100円を受け取ることができます。そのため10年間持ち続けた際の収益は5×10+100-100=50円となります(ここでは簡便のため割引率は考慮していません)。
では金利が上がることを考えてみましょう。5%から7%になり、新しく利率が7%の債券が発行されたことを考えてみます。
「利率7%、債券価格100円、満期5年」のとき収益は以下となります。
7×5+100-100=35円
ここで、あなたが前から持っていた利率5%、額面100円の債券を売りに出すことを考えてみましょう。100円で売り出すと、まず売れないでしょう。なぜなら収益は次のようになるからです。
5×5+100-100=25円
先ほどの債券と比較すると収益の差額は35-25=10円、すなわち利率5%の債券を売る場合、100円から10円下げた90円で販売しなければ利率7%の債券に対抗できないことが分かります。よって、金利が上がると債券価格が下がり、逆に金利が下がると債券価格が上がるという負の相関関係ができるのです。
金利と為替レートの関係
続いて金利が為替レートに与える影響を考えてみましょう。
為替レートは需給の関係によって決定されますが、輸出入等の実需に比べ投機的な資産売買の取引の方が圧倒的に多く一般的には8,9割を占めると言われているため、為替レートは資産価格と考えることもできます。
資産売買とはすでにもっている資産の保有比率を変更することを指します。例えば、ドル資産を買うとはすでにもっている円資産を売ってドル資産を買うことを指し、ドル需要が高まったことを表しています。
全ての人は資産の保有比率の変更を通して、各資産の期待収益率が等しくなるように資産のポートフォリオを組みます。これによって為替レートが決定するという考え方をアセットアプローチと呼びます。
為替の相場決定理論はいくつかあり、他にも物価に着目した購買力平価説などがありますが、アセットアプローチは、円資産の利子率、ドル資産の利子率、1年後の為替レートを用いて現在の為替レートを求めるものです。
これによると円資産の利子率が上がると現在の為替レートは円高に動きます。逆にドル資産の利子率があがると、ドル高に動きます。円資産の利子率が上がれば円資産の期待収益率もあがり、円需要が高まるため円高ドル安となる、これは感覚として受け入れやすいのではないでしょうか。
一方で、金利平価説という考え方があります。これは、自国通貨と外国通貨の名目金利の差によって為替レートが決まるとする考え方です。
例えば、円の利子率が1%、ドルの利子率が3%、現在の為替レートが1ドル100円だったとしましょう。1年後にはどうなっているでしょうか。
・円資産は100円→101円
・ドル資産は1ドル→1.03ドル
となっています。
ここで1年後の為替レートをe1とすると
1年後のドル資産は円で考えると、1.03×e1円の価値があります。
ここで、円とドルで期待収益率は等しくなるように裁定取引が行われるはずですから、次式が成り立ちます。
101=1.03×e1 ⇨ e1≒98.06
図にまとめると以下のようになります
円の利子率1%、ドルの利子率3%とした時
為替レートは1年後に
1ドル100円 → 1ドル98円
と円高ドル安になることが分かります。
よって、金利が高い国の通貨は価値が下がっていくことが分かります。
以上のことをふまえて、円とドルの関係を考えてみましょう。
現在の金利は円が低く、ドルが高い状況となっています。一般的には円の利下げやドルの利上げがあると短期的に見て、円安ドル高が進みます。一方で、今見てきた通り、長期的に考えると円高ドル安が進みます。
つまり、円の利下げがあると円安ドル高が進みますが、金利差が大きくなるため長期的にみると円高ドル安の圧力が大きくなるのです。すなわち、為替レートを考えるときは金利の均衡状態からの変化もそうですが、金利差そのものも考えることが重要になるのです。
まとめ
金利一つとってみても、債券価格や為替レート等、金融市場に与える影響は非常に複雑です。特にFX等は非常に手が出しやすい金融商品の一つですが、ボラティリティも高い上に、為替レートへの影響因子は広く多岐にわたります。実践される際には、事前の確かな勉強を強くお勧めします。
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