「長期にわたり利益を上げた者などひとりもいない」ベンジャミン・グレアム
「過去50年以上にわたる経験と市場観察によればテクニカル・アプローチによって、長期にわたり利益を上げた者などひとりもいない」ベンジャミン・グレアム
超高層ビル六本木ヒルズのレジデンスマンション、一人のトレーダーがスクリーンが6枚並んだデスクに向かっている。スクリーン上にはいくつもの折れ線グラフに棒グラフそしてレーダーチャートが並んでいる。時刻は8:55分。あと5分でマーケットが開く。マーケットのオープンが近づくにつれ、めまぐるしく板に示されるプライス、注文数が変化していく。
そのトレーダーは9時になるや否や携帯電話を取り出し電話をかける。相手はゴードン・ソックス証券のセールストレーダー、ジェームス田中だ。「Morning James. トヨタを2億円ほど買いたい。きれいなゴールデンクロスが出来てるからね!VWAPより下で頼むよ。それは保証できない?それが君の存在価値だろう。TEPCOはどうだろう?僕の見立てによればエリオット波動の第3波の状態にあると思うんだけど。。。」
なにか、実際にありそうな3流経済小説の書き出しの一部のようであるがこれは管理人がただ単に想像で書いた文章です。ただし、私が学生のころあこがれた外資系投資銀行マンの姿および個人投資家の姿はこのような物でした。少しこのやり取りを解説いたしましょう。まずここでは個人投資家のAさんとGSのセールストレーダー、ジェームスさんが出てきます。Aさんは株の個人トレーダーですが2億円もの株を買うのに実際ネット証券で買いを入れてしまうとマーケットで高い値段で買ってしまう恐れがあります。そこで登場するのがセールストレーダーです。セールストレーダーの仕事は客の注文を客の指定したラインより低い値段で買う、もしくは高いラインで売ることです。ここで出てくるゴールデンクロスや、エリオット波動というカッコイイ単語はいわゆるテクニカル分析の単語で例えばゴールデンクロスはゴールデンクロス(GOLDEN CROSS)」とは、最も代表的なテクニカル分析用語の1つとされており、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜ける(クロスする)ことをいう。 引用元楽天証券サイトつまり5日間の値段の折れ線グラフが25日間の折れ線グラフを下から上に突き抜けると買いのサイン!とされているということです。ここで出した二つの単語はテクニカル分析の中でも非常に有名な物ですが世の中には無数のテクニカル分析用語があります。無数の買いのタイミング、売りのタイミングがあるということですね。おそらくすべてのテクニカル分析の指標を勉強すれば一つの銘柄で毎日売り買いのシグナルが交錯することでしょう。
このようなテクニカル分析の用語を知っているかどうかは別として個人の投資家の方で非常に多いのは下がってるから買う。上がってるから買うとグラフだけを見て買っている人です。 当たり前のことですが株式のチャートというのは毎日の値動きの記録です。ではチャートのみを分析して株を売買することに本質的な価値があるでしょうか?
管理人の考えでは全くないと思います。
株式の価格はストップ高とストップ安の間で1日最大40%も変動する可能性があります。では株式の価値つまり会社の価値が一日で40%変動するでしょうか?
株式の価値は毎日変化するものではありません。正確には毎日変化はしますが投資家はそれを知る由はないのです。
株式とは会社の一部です。発行されているすべての株を買い集めればその人はその会社の独占オーナーです。当然会社の価値は日々少しずつ変化しますが投資家がその変化を正式に教えてもらえるのは四半期の決算短信の中だけです。つまり投資家サイドから見ると株式の価値は年に4回しか変化しないのです。逆に言えば年4回しかない決算短信は投資家にとって非常に重要な情報が詰まったものになります。
しかし個人投資家にアンケートを取ってみればチャートを見たことある人はおそらく90%を超えるでしょうが決算短信を読んだことがある人となると20%もいないのではないでしょうか。チャートのみを見て株式を売買することは会社の価値を一切分析せず日々のオークションの結果のみを追って他の人の動きに追随しているに過ぎないのです。
あなたが賢明な投資家になりたいと願うのであればパソコンでいくつも開いているチャートをいったんしまってEDINET(金融庁のサイト、上場企業すべての決算短信が無料で手に入る)から投資対象の決算短信をダウンロードするところから始めましょう。
チャートを見て売買する個人の投資家が、株価を変動させてくれるおかげであなたが自分なりの株式の価値というものを明確な基準で持っていれば、想定するよりもはるか安い価格でお目当ての株式を購入することも可能になるはずです。