元証券マンが明かす“本当にいたダメ証券マン”の実態
サマリー
- ・元証券マンとしての経験上、証券会社の中には残念ながら“ダメ証券マン”が存在している
- ・証券マンの中には、投資の勉強を全然しない人や大事な説明をしない人などがいることがある
- ・大切なのは、証券マンや投資営業の担当者の個々の実力や人間性を見極めること。
- 大手機関などで投資を行う場合、十分に注意したい
以前、「投資信託販売の裏側 – 証券会社の持つ2つの問題点 –」という記事を書きましたが、今回は元証券マンの私が知る証券会社の別の問題点をお伝えしたいと思います(未読の方やこれから投資を始めたいと思っておられる方は、今後、投資に関するトラブルに巻き込まれないようにするためにも是非ご一読頂きたいと思います)。ここでは、国内の大手証券会社に以前勤めていた自身の経験から、私が実際に接したことのある“本当にいたダメ証券マン”について、体験談としてお伝えします。
但し、当記事の内容は、全ての証券会社の営業員や従業員に当てはまるものではありません。当然ながら、証券マンの中には優秀な方も多数いらっしゃることを付言しておきます。
ダメパターン① 全然勉強しない人
ある日、自分のパソコンで仕事していると、部署内で1位、2位を争う営業成績の優秀な先輩Aさんから、ある質問をされて驚いてしまいました。後輩の私に対して、Aさんはこう聞いてきたのです。
「QUICKで株価ってどう調べんの??」
QUICKとは、証券会社等の社員が株価や為替の値動きを調べたりする場合に利用する投資情報サービスのことです。証券マンにとって必需品ともいえるもので、私のいた証券会社では営業全員が利用していました。
そのQUICKで株価を調べる方法は、日々の業務をしていたらほぼ全員が知っているはずの簡単なものでした。しかし、営業成績の優秀だったAさんは、なぜかそんな基本的なことを知らない・・・というわけです。
なぜそんなことになるかというと、Aさんは自分で勉強せず、上司や本社情報部から教えてもらった投資情報を全て「受け売り」にして仕事していたからです。当然ながら、ある程度の金融知識がなければ、今後、どの金融商品が有望なのか、マーケットが将来どうなるのか、自分で判断することができません。しかし、実際にはAさんのような投資知識のない人でも“受け売り”で営業が可能であり、その成績が高い人が“優秀”な営業マンとして評価されます。実のところ、Aさんは、常に営業成績はトップクラスでしたが、顧客の投資パフォーマンスは・・・というところでした。自分でよく勉強しないのですから、当然の結果かもしれません。
ダメパターン② 大事なことを言わない人
昔ながらの大手証券会社は、投資にかかる手数料が比較的高額であると言わざるを得ません。手数料の多寡はお客様の投資成果に関わる非常に大切なポイントの一つです。
しかし、証券マンの一部には、そんな大事な手数料を詳しく説明しない者が時々いるようです。
私の10年ほど上の先輩に当たるBさんは、とても優秀で優しそうな方でした。お客様からの信頼も厚かったのですが、そのBさんが会社を辞めるということで、Bさんの担当されていた顧客の一部を私が引継ぐことになりました。
ある日、私がBさんのお客様だった方の一人に初めてご挨拶に行き、そのお客様の投資残高を一緒に見ていると、変な取引が見つかりました。そのお客様は、ある外国債券をBさんから勧められて購入していたのですが、その購入金額が「980~990万円」とどうも中途半端な金額だったのです。
なぜ金額に疑問を覚えたのかというと、その外国債券の手数料は金額に応じて変わるものだったからです。大まかに言えば、その外国債券の購入金額が1,000万円以上の場合、手数料の割合が、1,000万円未満の場合の2分の1になると決まっていました。
つまり、上記のお客様が外国債券を1,000万円ちょうど購入していたら、お客様の支払う手数料はずっと減っていたのです。当時、そのお客様は2~3,000万以上の銀行預金を保有していると仰っていました。ということは、そのお客様は外債購入時に1,000万円ちょうどで購入することもできたはずでした。当時、お客様が外国債券を1,000万円ちょうど購入していたら、お客様の支払手数料はおよそ20万円以上減っていた計算になったと記憶しています・・・。
このBさんのお客様に外国債券の手数料体系をさりげなくお見せしましたが、あまりご記憶にない様子でした。
「Bさん、とってもいい人だったのよね~」
と、笑顔で語るそのお客様を見ていると、優しそうだったBさんを思い出し、人は見かけによらないなぁ、と心底思った次第です。
ダメパターン③ 会社の方針にただただ流されている人
私の経験上、私の元上司たちは会社の「新商品」が大好きでした。私の所属していた証券会社では、そもそも「新商品」を取り扱う義務が各営業部署には存在せず、基本的に営業方針は各部署の裁量に任せたシステムになっていました。それにも関わらず、元上司たちは熱心に「新商品」に取り組むことが多かったものです。
その元上司の一人、Cさんも、会社の新商品の投資信託の販売などを部署内の営業方針の中心に次々と据える証券マンでした。
例えば、ある月に「ブラジル通貨型投信がチャンス!」と会社がブラジル通貨型投信の新商品を出せば、Cさんは特に疑うこともなく、新商品に乗っかって私を含む部下の営業マンらに新商品に重点をおいたノルマを課していました。翌月「ハイ・イールド債(相対的に高利回りの債券のこと)投信がチャンス!」と会社がハイ・イールド債の新商品を出せば、またCさんは、特にその根拠を疑わずに各営業マンらにその新商品に重点をおいたノルマを課していました。更にしばらく経って「世界REIT投信がチャンス!」と会社がREIT投信の新商品を出せば、またしてもCさんは・・・と、Cさんの営業方針はこの繰り返しでした。
このため、営業マンは、毎月のように中心商品を変える必要があり、無茶なノルマが課されることもしばしばでした。中には、ノルマの重さから、投資信託の無茶な買い換えを顧客に勧める者も出てきてしまいました。
これで顧客のためになるならまだ良かったのですが、私がCさんの部下として仕事をしたのはリーマンショック以降の数年間の不況の時期。そんなに簡単に利益が出るような市場環境ではありませんでした。当時、お客様は高い手数料を取られたにも関わらず、投資成果は一向に上がっていかないという不満を高めていきました。
「また新商品?そんな話はもういいよ」
「お前の勧めた新商品、何か月待っても利益が出ないぞ。全然話が違うじゃないか!」
などと、部署全体でお客様からクレームを頂く機会が増えて行きました。Cさんも、自身の担当するお客様からのクレーム対応に追われるようになりました。
しかし、結局、Cさんはその後も営業方針を大きく変えることはありませんでした。Cさんがなぜ会社の新商品ばかりにあんなに強気だったかはわかりませんが、特にリーマンショック以降の数年に限っては、Cさんの営業のやり方は失敗だったと思わざるを得ません。
リーマンショック以降のあの時期、Cさんが少しでも営業のやり方を反省していたら、お客様に無駄な手数料を支払わせることなく、お客様の被る損害も減っていたかもしれない・・・今から振り返っても、私にはそう思えてなりません。
まとめ
証券マンの中には、お客様に高い投資成果をもたらす優秀な方もいれば、そうでない人間もいます。大切なのは、もし証券マンや金融機関の営業担当者があなたを訪ねてきた場合、相手の実力や人間性をしっかり見極めることです。
今、投資に関する営業担当者とお付き合いのある方や、これから付き合うかもしれない方には、十分ご注意頂きたいと思います。
ただ、最後に本当に本質的なことを言えば、証券マンの中にダメな社員が多いというのは、証券会社のシステム自体にも問題があるからだと私は思っています。問題というのは、証券会社の会社としてのミッション(社員の目標)がとにかく金融商品を不特定多数にたくさん売ることであり、それ以上でも以下でもない、ということです。
結局自分の売った商品がその後上がろうが下がろうが、証券会社自体には関係がないわけであり、このような状況では、証券会社の営業員に過度に高い質が求められないのも、ある意味では仕方のないことかもしれません。
私と同じように、実際に証券会社にいて裏の事情まで理解している人間は、証券会社から商品を買わず私募のファンドなどに預け入れて自身の資産を運用しているようなパターンが多いと感じます。そういった事情や、資産運用に関するノウハウについては以下のページにてまとめています。是非ご一読ください。
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