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2016年09月13日

「物言う株主」村上ファンドの過去と現在

 

サマリー

・村上ファンドとは、経営参加権の行使により株主利益を追求するアクティビスト投資グループの総称

・ファンド代表の村上世彰氏がインサイダー取引を行ったため、2006年、村上ファンドは解散した

・現在、村上氏はシンガポールを拠点に投資活動を再開し、日本でもアクティビスト投資を行っている

 

 

村上ファンドとは?

村上ファンドとは、通商産業省(現経済産業省)元官僚の村上世彰氏(56歳)などによって1999年に設立された投資ファンドの総称を指します。その主な投資戦略は、経営参加権の行使により株主利益の最大化を図るアクティビスト投資でした。村上氏の登場以前には、アクティビスト投資は日本において一般的ではなかったため、ファンドの代表だった村上氏は「物言う株主」と呼ばれ、大きな注目を浴びることになりました。

 

村上ファンドの実際の投資例として、村上ファンドが有名になるきっかけとなった「東京スタイル事件」が挙げられます。

 

東京スタイル事件とは

2002年当時、東証1部上場のアパレルメーカーだった株式会社東京スタイルは、約1,300億円にも上る現預金等を保有していました。東京スタイルは当初、その潤沢な資金を用いてビル建設を予定していましたが、村上ファンドはその建設計画に反対しました。村上ファンドは東京スタイルの筆頭株主となった上で、東京スタイルに対して以下の2つの要求を行いました。

  •  ■ ビル建設を中止すること
  •  ■ 約1,300億円の現預金等を原資に、自社株買いを実施すること

自社株買いが行われた場合、対象となる株式の株価が上昇する可能性が高くなると考えられます。上記の要求により、村上ファンドは株主利益の最大化を追求したのです。

 

東京スタイルと村上ファンドの争いは委任状争奪戦(株主総会で議決権の獲得を争うこと)にまで発展しましたが、結果として、村上ファンドの要求は認められませんでした。しかし、村上ファンドによる自社株買いの提案直後、東京スタイルの株価が一時15%以上上昇するなど影響は大きく、東京スタイル事件は、村上ファンドの存在を社会に強く印象付けた出来事だったと言えます。

 

 

その後も、村上ファンドは、玩具メーカー大手のタカラや私鉄大手の阪神電鉄など多数の企業の大株主になり、「物言う株主」として投資先の経営陣に株主利益の向上を要求し続けました。しかし、村上ファンドの運営は順調に思われていたにも関わらず、2006年、突如としてファンドは解散することになります。ファンド代表の村上氏がインサイダー取引を行ったからです。

 

 

村上ファンドの解散と村上氏の有罪確定

村上氏がインサイダー取引を行った背景には、そもそも村上氏がライブドアによるニッポン放送株大量取得問題に関与していたことがあります。

 

ニッポン放送株の大量取得問題とは、2005年当時、堀江貴文社長率いるライブドアがフジテレビへの経営参加を目的にして、フジテレビの筆頭株主だったニッポン放送の株式の過半数を取得した問題をいいます。最終的に、この大量取得問題はライブドアとフジテレビの和解によって終結し、両社の業務提携に落ち着く結果となります。

 

そして、このニッポン放送株大量取得問題に関連して、村上氏はインサイダー取引を行ったものとされ、2006年6月、証券取引法違反の容疑で逮捕されました。そもそも「インサイダー(内部者)取引」とは、企業の株価に多大な影響を与える重要な事実が公表される前に、その重要な事実を利用して当該企業の株式の売買を行うことをいいます。上場企業の経営者など内部者しか知り得ない重要な事実が公表前に株式取引に利用されてしまえば、一般投資家が不利な立場に置かれてしまうため、インサイダー取引は禁止されているのです。

 

しかし、村上氏は、ライブドア社長だった堀江氏から2005年のライブドアによるニッポン放送株大量取得の方針を聞かされていたにも関わらず、2004年にニッポン放送株を取得していました。そのため、村上氏がインサイダー取引によって不正な利益を得たとされ、村上氏の逮捕に至りました。

 

村上氏のインサイダー取引に関する疑念を受けて、2006年、村上ファンドは解散し、村上氏は日本国内で投資業務に携わることができなくなりました。さらに、2011年、最高裁の決定により、村上氏の懲役2年、執行猶予3年の有罪が確定する結果となりました。

 

結局、村上氏がインサイダー取引に手を染めた原因は何だったのでしょうか。その原因の一つとして、村上ファンドに対する投資家の過度の期待を挙げる意見が見られることがあります。村上ファンドは社会的に大変有名になってしまったために、ファンド実績に対する投資家の期待が高まり過ぎ、村上氏が過度の利益追求のプレッシャーに負けてインサイダー取引を行ったのではないか、という意見です。少なくとも、村上氏がニッポン放送株などを取得せず、従来行っていたアクティビスト投資のみに集中していれば、村上ファンドの未来は変わっていたのではないかとも考えられます。

 

 

村上世彰氏の現在

現在、村上氏はシンガポールに在住し、同国を新たな投資活動の拠点としています。2011年に執行猶予3年の判決を受けた村上氏ですが、その執行猶予期間が経過した2014年6月頃から、再び日本でアクティビストとして活動していると見られています。このような村上氏の活動に関して、報道各社は「村上ファンド復活」「新生村上ファンドの登場」などと報じています。

 

過去、「物言う株主」として大きな関心を集めた村上氏が、再び日本におけるアクティビスト投資を活性化させるきっかけとなるのか注目されます。

 

 

まとめ

「村上ファンド」の名を聞いたことのある投資家は多いかと思います。一方で、なぜ「村上ファンド」が非常に有名・話題となり、問題視されたのか正確に知らないという方もいらっしゃるでしょう。今後、再び注目される可能性のある「村上ファンド」について、一つの参考として知っておいた方がいいかもしれません。

 

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