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2016年01月12日

2016年1月のマイナス金利で100%株高にならない理由

 

サマリー

・マイナス金利とは、日銀が民間銀行の当座預金の一部に0.1%の手数料を課する政策

・マイナス金利が適用される当座預金はほんの一部、経済全体への実質的影響はほとんどない

・しかし、今後、金利の適用残高が拡大される場合、株高・不動産高が起こる可能性も

 

 

日銀が導入したマイナス金利政策って?

日銀は、2016年1月28~29日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の導入を決めました。日本の金融政策としては初めてのことです。マイナス金利政策の目的は、民間銀行が今まで以上に消費者や企業へお金を貸し出すよう促すこと。こうして経済を活性化させ、デフレ(物価下落)からの脱却を図るのです。

 

では、マイナス金利とはどのような政策なのでしょうか。

 

そもそも日銀は量的緩和政策を行っています。量的緩和政策とは、日銀が市場に供給するマネーの量を増やす政策をいいます。具体的には、日銀が民間銀行の保有する国債などを買い上げ、その代金を当座預金(民間銀行が日銀に開設している口座)に振り込む形でマネーを供給します。この量的緩和政策によって供給されたマネーにより、民間銀行の融資が拡大し、景気回復が実現すると期待されていました。

 

しかし、量的緩和政策によっても民間銀行は十分に融資を増やせず、あまり効果が上がりませんでした。そこで、量的緩和をいっそう強化するために導入されたのがマイナス金利です。

 

マイナス金利政策は、民間銀行が日銀に持つ当座預金の一部に対してマイナス0.1%の金利を付与するものです。通常、預金者は銀行から利子を受け取るはずですが、マイナス金利では逆に預金者(民間銀行)が日銀に0.1%の手数料を払うことになります。よって、マイナス金利は民間銀行にとって不利に働きます。この仕組みにより、民間銀行が日銀の当座預金から資金を引き出し、その資金を消費者や企業に貸し出すよう促すのです。こうして日銀は経済を活性化させ、デフレを防ごうとしています。

 

 

今回のマイナス金利は株高をもたらさない

マイナス金利によって、一般消費者はどのような影響を受けるのでしょうか。

 

まず、今回の政策で、一般消費者の利用する銀行預金がマイナス金利になるわけではありません。日銀が導入したマイナス金利は民間銀行と日銀との間にのみ適用されるからです。但し、マイナス金利の導入によって一般の預金金利が低下することは不可避といえます。実際に、三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行のメガバンク3行をはじめ、りそな銀行やゆうちょ銀行などが普通預金金利を0.001%まで引き下げました。

 

次に、株価に対する影響はどうでしょうか。一般的に「金利が下がると株価が上がる」といわれています。金利が下がれば資金調達コストが低下し、事業活動に好影響を与えるからです。

 

では、今回のマイナス金利政策が株高につながるのでしょうか。残念ながら、短期的にはともかく、長期的に株高をもたらすことはないと考えられます。その主な理由は、2016年1月導入のマイナス金利が適用されるのは、日銀にある当座預金のうちごく一部だからです。日銀当座預金は2015年12月末時点で250兆円強ありますが、このうちマイナス金利の適用を受けるのは10~20兆円程度。今回の規模では、経済全体に与える実質的な影響はほとんどないと考えられます。

 

もちろん、マイナス金利が局所的に好影響をもたらすことはあります。特に、金利低下によって住宅ローンなどの金利が下がり、不動産業界などに追い風となります。しかし繰り返しになりますが、今回のマイナス金利が適用される資金はほんの一部ですから、全体への影響はわずかなものに留まると予想されています。

 

 

まとめ

2016年1月のマイナス金利の影響は限定的ですが、一方、将来的に日銀がマイナス金利の適用を拡大する可能性があります。すると、日銀から引き出された資金が金融市場に向かい、株価や不動産価格の上昇が起こり得ます。今後、金利水準はもちろん、その金利の適用残高を注視する必要があります。