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2016年04月02日

原油安の背景とイランを含めた今後の見通し

 

サマリー

・そもそも原油安の原因は、原油の需要減少と供給増加が同時に起こってしまったことにある

・今後、産油国の原油の増産凍結・減産決定ができるか否かで、原油価格の先行きが決まると考えられる

・原油価格の将来の値動きを予測し、世界経済や金融市場の先行きを見極めよう

 

一時期、1バレル26ドル台の値を付けるほど進んだ原油安。2016年4月12日現在、原油価格は1バレル40ドル台まで持ち直しています。なぜ原油価格が大きく値動きしているのでしょうか。ここでは原油価格の変動要因を見てみましょう。

 

 

なぜ原油安になったのか?

そもそも1バレル26ドル台まで進んだ原油安の背景には、以下のような要因があったとされています。

  • ・中国経済の減速
  • ・米国でのシェールオイルの増産
  • ・サウジアラビア、ロシア、イランなど産油国の原油増産

 

まず、原油の需要面から見ると、元々2014年前半までの原油価格の上昇は、中国の経済発展によって支えられていたものでした。しかし、中国が発表した2015年のGDP成長率は実質6.9%で、25年ぶりの低水準となりました。専門家の一部には、実際の成長率は中国の発表よりも低いのではないかという見方まであります。2015年の中国の貿易総額も前年比7.0%減となり、中国経済の減速が鮮明になっています。このような中国の景気の落ち込みが原油需要の減少につながり、原油安の一因になっているのです。

 

次に、原油の供給面から考えると、原油安の背景には米国のシェールオイル増産が挙げられます。シェールオイルとは、地下のシェール層(けつ岩層)から採掘される石油をいいます。シェールオイルの採掘は困難とされていましたが、近年、技術革新により採掘が可能となり、現在、シェールオイルの採掘による原油生産量は約500万バレル以上(日量)に達していると言われています。

 

また、原油安の原因には、サウジアラビアやイランなど産油国の原油増産も挙げられます。石油輸出国機構(OPEC)加盟国の原油生産量は3,200万バレル程度(日量)にまで上っており、過去10数年間の中でも最高の生産量になっています。

 

 

しかし、産油国としては、減産して原油価格を上昇させた方が有利であるにも関わらず、なぜ各国が原油増産に踏み切っているのでしょうか。その背景には、各国それぞれの思惑があるようです。

 

2016年に入って経済制裁を解除されたイランは、原油の生産回復を優先する姿勢を見せています。経済制裁によって打撃を受けた原油の市場シェア回復の狙いがあると考えられます。このようなイランを始めとする競合国の攻勢を受けて、世界最大の石油輸出国サウジアラビアも産油国間における自国の地位低下を危惧し、原油の減産には慎重な姿勢を保持するものとみられます。

 

以上のように、2016年3月までに見られた原油価格の下落は、原油需要の減少+供給量の増加という要因によって引き起こされたと考えられています。

 

 

原油価格は今後どうなる?

原油価格の下落に歯止めをかけるには、今のところ、OPEC加盟国など産油国の生産調整に期待するしかありません。今後の焦点は、産油国の間で原油の増産凍結が合意するか否か、ひいては原油減産の方向で産油国が協調するか否か、ということになると考えられます。2016年4月12日現在、1バレル40ドル台まで原油価格が持ち直しているのも、原油の増産凍結について産油国の間での協議開始が決まったことに因るものとみられます。

 

既に2016年2月には、サウジアラビア、ロシア、カタールなどの間で増産凍結の合意が行われました。しかし、合意された内容が実施されるためには、イランなど他の産油国の同意が条件となっています。今月17日にカタール・ドーハで産油国の会合が開かれることが決まっていますが、増産凍結の実施に向かうかは依然、確実とはいえない段階です。

 

増産凍結の鍵を握る国の一つはイランです。イランの原油増産の姿勢は強く、増産凍結の合意に向かう動きに対して反発しています。経済制裁解除のイランのみに原油増産を認め、他の産油国は減産するというシナリオが実現すれば、各国の今後の協調にもつながり、原油の供給過剰も緩和されると期待されていますが、金融市場では、イランのみに増産を認める可能性は低いとも予想されています。

 

今後とも、増産凍結について産油国の間の合意が行われるか否かという点に注目する必要があります。産油国の会合日程などを把握し、その日程前後の原油市場の動向に注意した方がいいと言えるでしょう。

 

 

まとめ

原油価格の値動きによって、世界経済や金融市場に大きな影響が及びます。今後の原油価格の先行きを知るために、産油国の動向を細かくチェックした方がいいでしょう。