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2016年05月08日

地震が起こったとき、株価はどうなる? – 震災の株価への影響 –

 

まず初めに、2016年熊本地震により被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と、震災からの一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 

 

サマリー

・大地震が起こった場合、震災自体が株価や為替に直接的に影響するとは限らない

・しかし、東日本大震災後の原発事故発生の際には、日経平均株価は過去3番目の下落率を記録した

・震災自体の影響よりも、震災後の重大事故など社会経済の変化に注目する必要がある

 

 

地震など大きな災害が発生した場合、社会に対する多大な影響は避けられないと言えます。では、株価に対しては、どのような影響を及ぼすのでしょうか。本コラムでは過去のデータを基に、地震と株価の関係について見てみましょう。

 

 

地震と株価の関係

下表は、1990年以降に起きた震度7以上の地震発生時において、日経平均株価がどのような値動きを見せたかを示すデータです。

震災と日経平均1ヶ月

 

この表を見ると、地震自体が株価に与える影響は必ずしも大きなものではないことが窺えます。震災後1か月間の値動きに限れば、震災後の株価は比較的に下落する傾向にあるようにも思われますが、この下落傾向はその後も続くのでしょうか。

 

震災後1年間の日経平均株価の値動きを見てみましょう。

震災と日経平均1年

 

 

震災後1年間の値動きまで見ると、地震そのものと株価の関係には強い相関性が見当たらないかと考えられます。もちろんサンプル数が少ないため、「地震が株価を下げることはない」と断言することはできませんが、強い地震が起こったからといって慌てて日本株を投げ売りするのは得策ではないと言えるでしょう。

 

 

但し、地震のもたらす重大事故などには注意する必要があります。

 

日経平均株価の下落率ランキング(時事ドットコム「【図解・社会】東日本大震災・日経平均株価の下落率ランキング(2011年3月15日)」)によれば、東日本大震災後の2011年3月15日の日経平均株価は前日比マイナス10.55%の下落率を記録し、過去3番目の下げ幅となりました。この下落の原因は、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故の影響に因るものと考えられています。このように、地震による重大事故が甚大な経済的影響を及ぼし得る場合、株価に対して非常に大きなマイナス要因となる可能性があります。

 

地震自体が必ずしも株価に大きな影響をもたらすとは限りませんが、地震によって連鎖的に引き起こされる重大事故・事件の発生の有無には注意しなければならないと言えます。

 

また、地震の発生によって個別企業の業績に影響が及ぶ可能性も想定した方がいいと考えられます。2016年4月14日に発生した熊本県を震源とする地震により、ホンダやブリヂストンの工場は操業を停止したとされています。同年4月15日の終値では、ホンダやブリヂストンの株価に震災の大きな影響はみられませんが、今後とも震災による個別企業への影響に注視する必要があるでしょう。

 

 

為替に対する地震の影響は?

最後に、地震による為替への影響を見てみましょう。

下表は、震災後のドル円相場の値動きを示したものです。

震災と為替

 

上記データによれば、ドル円相場に対する地震自体の影響は、株価に対する影響と同様、必ずしも大きなものになるとは言えないとみられます。

 

株価及び為替の値動きについては、地震自体の直接的な影響よりも、地震発生後の経済状況の変動に注目した方がいいと考えられます。例えば、今後の消費税増税延期の行方などを報道などでチェックし、金融市場の動向に目を光らせるなどする必要があるでしょう。

 

 

まとめ

大きな震災が起こったとしても、資産運用のスタンスを慌てて変えることなどは得策ではありません。災害が発生した場合、落ち着いて状況を把握することが大切です。

何より、この度の震災の影響がこれ以上拡大することのないよう、そして一日も早い復興が実現するよう願うばかりです。

 

 

片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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