資産運用 Lab.

第1章 欺瞞会見

要約

 

2006年6月5日午前11時、村上の逮捕直前に異例の会見が行われた。村上がニッポン放送の株式取得に関してインサイダー取引の容疑をかけられており逮捕されることが確実視されていた為、この会見は全国が注目した。

 

この会見は、村上の謝罪会見・辞任会見であるとされていた。しかし、著者によれば、この会見は以下の点から、欺瞞に満ちた“自己弁護の為の”会見に過ぎなかったと言う。

 

1)記者会見のセッティング

村上は会見に際して、意図的に村上サイドについてくれる顔なじみの記者を揃えた。会見の流れは、なじみの記者が村上の意図に沿った質問をしていく形式で、これを報道することにより世論を操作する目的があった。これは米国のアクティビストファンドがよくやる手法である。

裁判所は世論を気にする為、世論の後押しによって今回の事件に関して裁判所が下す判決が村上サイドに有利になるよう、徹底的に意識したものである。

 

 

2)インサイダー取引に関する釈明

村上の容疑は、証券取引法一六七条第一項および証券取引法施行令三一条、これは「5%以上の株士を買い集めようとしている事実を知った者が、その事実の公表前に株を買ってはならない」とする証券取引法の違法行為である。

 

今回、堀江率いるライブドアが2004年11月に村上の元を訪れ、「ニッポン放送の株式を5%以上取得する意図がある」ことを説明。この話を聞いた後の2004年11月〜2005年2月の間村上ファンドはニッポン放送の株式を取得しており、これが違法行為にあたるということである。

 

しかし会見の場では、これをあくまで「うっかりミス」として説明。ライブドアが2004年11月に村上を訪れた際に言っていたのはニッポン放送株式取得の宣言ではなくて願望に過ぎなかったと判断したから買い続けてしまった、と主張した。

検察側の、これはインサイダーであるというロジックに関しては、「意味が全く分からない」という姿勢をとるのではなく、「指摘され、真摯に考えたところ、確かにそういう法律の解釈もあると納得した」という立場をとった。

これによって村上が暗に主張したかったのは、自分には全く悪意がなかったということ、また悪気はなかったが法的な指摘を受け、それを真摯に受け止めようとしているということである。村上の話はいたるところに不信感が漂う、辻褄の合わない部分があるとして著者はこれらを自己弁護の為の功名な説明と批判している。

 

 

3)堀江に関する言及

2004年11月に村上の元を訪れたライブドアメンバーは、堀江の他に、ナンバー2の宮内、あとは若手が何人かだったと言う。

堀江や宮内はこの頃、捜査の中で村上の容疑について違う意見を出していた。堀江はその容疑を認めず、宮内は認めていた。

 

この点に着目した村上は会見で、2004年11月にライブドアと会った際、宮内だけは「ニッポン放送に興味ある」ようなことを1人で言っていたが、堀江は何も語っていなかったとしている。

 

その後会見の中では再三に渡って宮内のネガティブキャンペーンを行い、堀江に対してはポジティブな意見を述べ続けた。宮内だけがオカしなことを言っているんだ、というイメージを植え付ける狙いがあった。

そして何と言っても堀江に対する暗黙のメッセージでもあったと想像される。「堀江君、そのまま否認し続けてくれ。お互い容疑が晴れたら一緒に新たなビジネスをやろう。」

 

しかしライブドアのミーティングで堀江が喋らないことなど現実的とは思えず、これらの村上の発言も、概ね作り話だろうと著者はみている。

 

 

 

補足情報

 

証券取引法一六七条第一項、および証券取引法施行令三一条

村上の容疑に該当する法である。両方ともに、5%以上の株を買い集めようとしている事実を知った者が、その事実の公表前に株を買ってはならないとするものである。

内部の関係者(=インサイダー)が内部情報(=インサイダー情報)をもとにして株を買うという典型的なインサイダー取引を禁じた一六六条の違反行為とは違い、これらが禁じているのはTOB(=公開買い付け)またはそれに準じた行為をすることを知って、それに先回りして株を買うことを禁じる法律である。

 

トリックスター>

世紀の空売り>

ライアーズ・ポーカー>


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第1章 欺瞞会見

要約

 

2006年6月5日午前11時、村上の逮捕直前に異例の会見が行われた。村上がニッポン放送の株式取得に関してインサイダー取引の容疑をかけられており逮捕されることが確実視されていた為、この会見は全国が注目した。

 

この会見は、村上の謝罪会見・辞任会見であるとされていた。しかし、著者によれば、この会見は以下の点から、欺瞞に満ちた“自己弁護の為の”会見に過ぎなかったと言う。

 

1)記者会見のセッティング

村上は会見に際して、意図的に村上サイドについてくれる顔なじみの記者を揃えた。会見の流れは、なじみの記者が村上の意図に沿った質問をしていく形式で、これを報道することにより世論を操作する目的があった。これは米国のアクティビストファンドがよくやる手法である。

裁判所は世論を気にする為、世論の後押しによって今回の事件に関して裁判所が下す判決が村上サイドに有利になるよう、徹底的に意識したものである。

 

 

2)インサイダー取引に関する釈明

村上の容疑は、証券取引法一六七条第一項および証券取引法施行令三一条、これは「5%以上の株士を買い集めようとしている事実を知った者が、その事実の公表前に株を買ってはならない」とする証券取引法の違法行為である。

 

今回、堀江率いるライブドアが2004年11月に村上の元を訪れ、「ニッポン放送の株式を5%以上取得する意図がある」ことを説明。この話を聞いた後の2004年11月〜2005年2月の間村上ファンドはニッポン放送の株式を取得しており、これが違法行為にあたるということである。

 

しかし会見の場では、これをあくまで「うっかりミス」として説明。ライブドアが2004年11月に村上を訪れた際に言っていたのはニッポン放送株式取得の宣言ではなくて願望に過ぎなかったと判断したから買い続けてしまった、と主張した。

検察側の、これはインサイダーであるというロジックに関しては、「意味が全く分からない」という姿勢をとるのではなく、「指摘され、真摯に考えたところ、確かにそういう法律の解釈もあると納得した」という立場をとった。

これによって村上が暗に主張したかったのは、自分には全く悪意がなかったということ、また悪気はなかったが法的な指摘を受け、それを真摯に受け止めようとしているということである。村上の話はいたるところに不信感が漂う、辻褄の合わない部分があるとして著者はこれらを自己弁護の為の功名な説明と批判している。

 

 

3)堀江に関する言及

2004年11月に村上の元を訪れたライブドアメンバーは、堀江の他に、ナンバー2の宮内、あとは若手が何人かだったと言う。

堀江や宮内はこの頃、捜査の中で村上の容疑について違う意見を出していた。堀江はその容疑を認めず、宮内は認めていた。

 

この点に着目した村上は会見で、2004年11月にライブドアと会った際、宮内だけは「ニッポン放送に興味ある」ようなことを1人で言っていたが、堀江は何も語っていなかったとしている。

 

その後会見の中では再三に渡って宮内のネガティブキャンペーンを行い、堀江に対してはポジティブな意見を述べ続けた。宮内だけがオカしなことを言っているんだ、というイメージを植え付ける狙いがあった。

そして何と言っても堀江に対する暗黙のメッセージでもあったと想像される。「堀江君、そのまま否認し続けてくれ。お互い容疑が晴れたら一緒に新たなビジネスをやろう。」

 

しかしライブドアのミーティングで堀江が喋らないことなど現実的とは思えず、これらの村上の発言も、概ね作り話だろうと著者はみている。

 

 

 

補足情報

 

証券取引法一六七条第一項、および証券取引法施行令三一条

村上の容疑に該当する法である。両方ともに、5%以上の株を買い集めようとしている事実を知った者が、その事実の公表前に株を買ってはならないとするものである。

内部の関係者(=インサイダー)が内部情報(=インサイダー情報)をもとにして株を買うという典型的なインサイダー取引を禁じた一六六条の違反行為とは違い、これらが禁じているのはTOB(=公開買い付け)またはそれに準じた行為をすることを知って、それに先回りして株を買うことを禁じる法律である。