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2016年07月14日

今、「制裁解除」で注目すべきイラン経済

 

サマリー

・イランの制裁解除により、イランの経済回復に対する期待感が国際的に高まっている

・今後、イラン国内の資源関連投資の活発化や消費市場の成長により、日本企業を含めた各国の企業にとって商機拡大のチャンスが広がると考えられる

・世界経済や日本経済の先行きに少なからず影響を与えるイラン経済の動向についても、時々ニュースなどでチェックしてみよう

 

 

日本はイランとの投資協定に署名

2016年2月5日、日本とイランは、投資の相互促進及び相互保護を目的とする投資協定に署名しました。この協定により、日本企業に対するイラン政府の契約遵守義務や送金の自由の保障など、企業の権利保護や透明性の向上が規定されることになります。この協定の締結によって、企業が投資を行った場合の法的安定性が向上し、日本とイランの一層の経済発展が期待されます。

 

しかし、なぜ日本は2016年の今、イランとの経済関係を強化しようとしているのでしょうか。ここでは、投資協定に至るまでのイランの経緯と、今後のイラン経済の見通しについて解説します。

 

 

そもそもイランってどんな国?

外務省ホームページによると、イランの正式名称は「イラン・イスラム共和国」で、イスラム教シーア派(イスラム教二大宗派のひとつで、最大勢力のスンナ派に次ぐ宗派)を国教としています。人口は7,850万人(2014年)、国土面積は日本の約4.4倍の164.8万㎢で、2014年の国内総生産(GDP)は日本の10分の1程度の4,027億ドルとなっています。通貨は「リアル」で、2014年の平均為替レートは1ドル=25,924リアルです。このレートだけ見ても、イラン国内でのリアルの貨幣価値は明確にわかりませんが、実際のところ、イランの物価は基本的に日本とほぼ同じか少し安い程度とのことです(近鉄グループ・クラブツーリズム「ペルシャ(イラン)の物価は?」参照)。

 

また、貿易に関してみると、イランの主要貿易相手国は中国、インド、アラブ首長国連邦などで、主要貿易品目は原油です。2013年のデータによると、イランは原油の確認埋蔵量シェア9.3%(世界第4位)、生産量シェア4.0%(世界第7位)を占めており、イランの原油生産は今後約120年間可能とみられています。

 

 

「イランの経済制裁解除」が意味するもの

そもそもイランは、米英仏など各国から経済制裁措置を受けていました。イランが原子爆弾に用いる「濃縮ウラン」を貯蔵し続けていたため、イランが核兵器を開発するつもりではないかと疑われていたからです。

 

しかし、2015年7月、イランと欧米各国などとの間で、イランが核開発を大幅に制限することが合意されました。この合意を受け、2016年1月、イランによる核開発制限が実際に行われていると確認されたため、イランに対する経済制裁解除が決定されるに至りました。

 

この経済制裁解除は、欧米各国がイランの国際社会復帰を認めることを意味しています。長期に渡って孤立状態にあったイランは、今後、政治・経済の両面で国際的な存在感を回復させるものと考えられます。

 

こうしたイランの経済制裁解除の決定があったからこそ、今年2月、日本とイランの投資協定の締結が行われるに至ったのです。

 

 

国際的な注目を集めるイラン経済

2016年初頭からの世界経済は、世界的な株安や原油価格の低迷などにより、波乱の展開となっています。そのような中で、経済制裁解除により回復の見込まれるイラン経済は、国際社会から注目されています。

 

例えば、今後、イラン国内の原油・天然ガス関連の投資が活発化するものと考えられています。油田や天然ガスプラントなど資源関連施設の建設がイラン国内に見込まれ、各国のプラント建設企業などがイランへの参入を図っています。

 

また、イランの人口構成は若年層が多く、全体的な教育水準も高いといわれています。そのため、各国企業がイランに生産拠点を置き、安価な労働力を活用する動きが加速するものとみられています。加えて、今後のイラン国内における消費市場の成長により、企業の収益機会も拡大する余地があると考えられます。

 

以上のようなイラン経済の回復により、日本企業にとっても、商機拡大のチャンスが広がっていくと考えられます。実際、記事の冒頭で取り上げた投資協定の署名式にも、三菱商事や丸紅など大手企業約20社の代表者が立ち会い、イラン進出に積極的な姿勢を見せています。イランの経済回復や日本企業のイランでの動向次第では、日本企業の業績拡大の余地が出てくるかもしれません。

 

但し、イラン経済の懸念の1つに、イランに対する再度の経済制裁措置が行われる恐れがあるということが挙げられます。イランが核開発制限の合意に反する動きを見せた場合、再び経済制裁を受ける可能性があります。イラン経済の先行きを見通すに当たって、核開発を巡るイランや欧米各国の国際的な動向にも目を光らせる必要があります。

 

 

まとめ

制裁解除によるイランの経済回復は、日本を含めた世界各国の企業にとって商機拡大の大きなチャンスになると考えられます。世界経済や日本経済の先行きを見通すに当たって、普段あまり注目しないイラン経済の動向についても、時々ニュースなどでチェックしてみると参考になるでしょう。

 

 

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片桐 峻

投資家、ファンドマネージャー。
日本にいる時は、時間を見つけてブログの読者さんとお茶しています。
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